「どうしても自信が持てない」と悩み、完璧な自分を求めるあまりに、マイナスのことばかりが頭に浮かんでドツボにハマっていませんか? 脳科学者の茂木健一郎氏は「心のよりどころとなる『安全基地』を作ることが大切。安全基地があるからこそ、チャレンジできるのです」と語ります。そしてその「安全」とは、学歴や肩書などの「安定」とは違うといいます――。

※本稿は、『脳のリミットのはずし方』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。

安心してチャレンジできる、脳の「安全基地」をつくろう

私の公式ブログ「脳なんでも相談室」では、皆さんからのさまざまな悩みについてお答えしています。

茂木健一郎『脳リミットのはずし方』(河出書房新社)

そのなかで、次のような相談を受けました。

「どうしても自分に自信が持てません。どうしたらよいでしょうか?」

たしかに、このような悩みを抱える人は少なくないでしょう。

ではなぜ、多くの人が自分に自信が持てないのか。それは、ほぼ例外なく「完璧な自分」を想定して「ここが足りない」、「あれが足りない」というマイナスのチェックリストをつくり出してしまっているからです。

マイナス要因が一切ない、百点満点の人間にならなくてはいけない――。

そんなふうに考えてしまう人にも、脳リミットをはずして、自信を持ってチャレンジしてもらえるように私が提案したいのが、脳の「安全基地」をつくるということです。

「安全基地」があると、子どもは好奇心が強くなる

安全基地とは、元々アメリカの心理学者であるメアリー・エインスワースが1982年に提唱した、「人間の愛着行動」に関する概念です。

エインスワースによっておこなわれた、愛着理論に基づく「ストレンジシチュエーション法」というものがあります。

ストレンジシチュエーション法とは、子どもと母親の愛着の度合いや、乳児の発達を明らかにするための実験観察法です。

まず、見知らぬ場所であるプレイルームで母親と一緒にいる子どもがどのような行動をとるかを観察し、記録します。

次に、母親がその場所から退出し、見知らぬ人がやってきたときに子どもがどのような行動をとるかを観察し、記録します。

最後に、見知らぬ人がその場から退出し、再び母親が戻ってきたときに子どもがどのような行動をとるか、観察し、記録します。

その結果、見知らぬ場所でも、子どもは母親がいれば安心して遊び、母親が退出して見知らぬ人が入ってきたときには不安を示しますが、母親が戻ってくるとすぐにまた安心して再び積極的に遊びだします。

このように、子どもは母親を「安全基地」として「よりどころ」とすることを通して探索活動に熱中できるようになるということを究明したのです。