何度チャレンジしてもうまくいかない。そういう人は自分自身を客観視する「メタ認知」の能力が低いのかもしれません。脳科学者の茂木健一郎氏は「自分の限界を超えて大きなことを成し遂げられる人は、ほぼ例外なくメタ認知能力が高い」といいます。では、どうすればメタ認知能力を伸ばすことができるのでしょうか。茂木氏がすすめる「アクター・クリティック法」とは――。

※本稿は、『脳のリミットのはずし方』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。

何度チャレンジしても、うまくいかない理由

自分の限界を超えてチャレンジしているが、なぜか失敗ばかりしている人がいると思います。

写真=iStock.com/tommaso79

どうすれば成功できるのかを知るためには、常に自分と対話をしながら自己確認することも、重要になってきます。

「何度チャレンジしても、うまくいかない……」

そんな経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。

もしかしたら、自分自身を客観視する能力が低いのかもしれません。

自分自身を客観視する能力のことを、「メタ認知」といいます。

このメタ認知能力を上げていくことで、脳リミットをはずせるようになってきます。

私はよく、このメタ認知を「鏡に映る自分をどう認識できているか」という言葉を用いて説明しています。

もっとわかりやすくいえば、自分の現状をあたかも外から見ているかのように客観的に観察する能力ということです。

自分の限界を超えて大きなことを成し遂げられる人は、ほぼ例外なくメタ認知能力が高く、感情に振り回されずに現実の自分と理想の自分のギャップを冷静に把握し、自分の欠点や課題を見いだすことができる人なのです。

メタ認知能力が高い人・低い人

では、メタ認知能力が高い人と低い人では、いったいどれほどの差が生まれてしまうのでしょうか。

メタ認知能力が高い人には、以下のような3つの特徴が挙げられます。

(1)客観的な視点で自分に可能かどうかを判断できる
(2)自分に足りない能力を見極められる
(3)自分の失敗を肯定でき、反省と改善を実践できる

このように、自分自身をしっかりと客観視できる人が、メタ認知能力が高い人です。

一方で、メタ認知能力が低い人の特徴として挙げられるのは、「自分の能力を冷静に把握できない」ということになります。

言いかえれば、自分の意見や考えていることは常に正しく、自分には間違いはないと疑わない、自己中心的な考え方の持ち主です。

自分の能力をついつい過大評価してしまう場合や、それを裏付ける確固たる根拠に乏しい場合もこれに該当します。

自分の能力に対する認識と現実にずれが生じているときでも、自分を客観視できないので、たとえ何かにチャレンジして失敗しても、そこから成功するための軌道修正がうまくいきません。