「真夏=冷たいもの」のウソ
季節によって人体が必要とする栄養素は異なります。真夏には、高温多湿な外気とオフィスの冷房との間で体温調節ができず、体調を崩す人も多くいます。熱中症にも気をつけなくてはなりません。盛夏に人々が、心地よく食べられる食事はどういったものでしょう。 以前、真夏に向けての商品開発の場で、キンキンに冷やした冷製フードをたくさん開発し、ずらりと棚に並べたらどうかと提案してきた社員がいました。
「真夏=冷たいものが欲しいはず」といった発想からです。でも私は、「それは少し違うだろう」と感じました。
たしかに戸外でずっと過ごしている人は、冷たいものを必要としているかもしれません。しかし、屋内で過ごしている人は必ずしも冷たいものを1日中欲しているわけではありません。冷房がかなり強い電車の中やオフィスで、キンキンに冷えたものを欲する人はどれだけいるでしょうか。ましてや女性の中には夏でも冷えで悩んでいる人も多く、彼女たちはむしろ冷え切ったオフィスで温かいスープなどを求めているものです。
つまり、冷製スープなどがよく売れるのは真夏ではなく、戸外も室内も暖かくなりかけの5月や6月なのです。 単純な春夏秋冬で商品開発を考えてはいけません。もっと詳細に天候や気温を考え、人体がもっとも欲しているものは何なのか、想像をめぐらすことが大切です。 東洋医学には「未病」という考え方もあります。本格的な病気になる前に、食で体のバランスを整える「医食同源」が大切だと考えられているのです。
本当に人体に良いものは何なのか、人々の体が欲しているものはどういうものなのか、人体の52週を考える癖をつけたいものです。現状と未来は異なります。「今がこうだから、この先もこれでいい」ではなく、目指すべき将来のビジョンを持つことが大切なのです。
冷やし中華のピークが4月中旬になる理由
もう1つ季節商品についてお話をしましょう。
コンビニの夏の定番商品に、冷やし中華があります。私も毎年天気予報とにらめっこしながら、冷やし中華のCMをいつ流すか考えています。 冷やし中華のCMがテレビで流れ始めると、多くの人が「夏が来たな」と感じるくらい、コンビニの冷やし中華は夏の風物詩ともなっています。
ところがこの冷やし中華、実はすでに2月から店頭に並んでいることをご存じでしょうか。暖かい室内で、つるりとした冷やし中華を食べたいという一定のニーズがあるからです。 しかし、テレビCMや横断幕などで大々的に宣伝してこそ、人々に「コンビニに冷やし中華が出た」=「夏が来る」とアピールすることができます。
このタイミングがまた難しいのです。まだ寒い時期に冷やし中華のCMを流しても、あまり購買には結びつきませんし、かといって十分に暑くなってしまってから流したのでは間が抜けてしまいます。ちょうど気温が20度になる頃、東京でいえば4月中旬(※)にバンとCMに打って出るのが正解です。
※編集部注:気象庁によると、東京における最高気温の平年値(1981~2010年)は、4月21日が19.9度、22日が20.1度、23日が20.3度となっている。