さて、この冷やし中華はほとんど年間を通じて販売しているとはいえ、前に述べたように、まだ外気温が寒い2月や3月と、じりじりと太陽が照りつける8月とでは、同じ「冷やし中華」を人々が求めているとは限りません。

季節や気温によって人体が欲する塩分値は異なります。それならばコンビニで提供する冷やし中華の塩分やお酢の配合も、だんだん変えていくのが正しいのではないでしょうか。春先にはまろやかな酸味を、真夏にはさっぱりとしたタイプを味わいたいと、私なら思うからです。

冷やし中華の「つゆ」は季節で変える

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現在私たちは、冷やし中華のつゆの味を、売り始めの前半と後半で変えています。気づいている人がどれほどいるかわかりませんが、確実にその季節に合った味わいになっているはずです。 和食のお店に行くと、必ず季節の旬の食材を使ったお通しが出され、そこからこれから始まる食事に対する期待感が膨らんでいくものです。

季節により食材を変えるのはもちろんのこと、ほぼオールシーズンを通して存在する商品についても、きちんと季節感を表すのが、日本人の味覚に応える姿勢ではないでしょうか。

私は、コンビニというのは世の中に出回っている商品を「つまみ食い」するだけのところであってはならないと思っています。 日本中で売れている商品をセレクトして販売する一方で、きちんと自分たちで考え、開発した商品を、お客様に届けていく場でもあるべきなのです。

本多利範 (ほんだ・としのり)
本多コンサルティング代表
1949年生まれ。大和証券を経て、1977年セブン‐イレブン・ジャパン入社。同社の最年少取締役に就任。後に渡韓し、ロッテグループ専務として韓国セブン‐イレブンの再建に従事。帰国後、スギ薬局専務、ラオックス社長、エーエム・ピーエム・ジャパン社長を経て、2010年よりファミリーマート常務。2015年より取締役専務執行役員・商品本部長として、おにぎりや弁当など多くの商品の全面改革に取り組む。2018年、株式会社本多コンサルティングを設立。著書に『おにぎりの本多さん とっても美味しい「市場創造」物語』(プレジデント社)がある。
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