コンビニで冷やし中華が最も売れるのは、いつだと思うだろうか。7月や8月の「夏」ではない。ピークになるのは4月中旬、最高気温が20度を超え始める時期なのだ。長くコンビニ業界で商品開発を担ってきた本多利範氏は「冷やし中華は暑くなってからでは売れない」という。その理由とは――。

※本稿は、本多利範『売れる化』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

季節、気候、気温は売り上げに大きく影響する

日本は四季が豊かな国です。春の桜、夏の緑、秋の紅葉、冬の雪と、四季折々の色彩や行事に溢れた国です。その中でも春は、一面の桜吹雪の中、入学式や入社式などが行われ、華やかな季節という印象があるのではないでしょうか。

『売れる化』(本多利範著・プレジデント社刊)

しかしその一方で、春は統計的に自殺者の多い季節でもあります。新たな出会いがある一方、卒業などの別れの季節でもあり、入社や入学による環境の変化に戸惑う人も多いからかもしれません。

まだ日照時間が短いことや、季節の変わり目に体調や精神面を崩しやすい人が多いことも関係していると思われます。

私たちの体調や気分は天候によって大きく左右されます。季節、気候、気温が人体に与える影響は無視できません。そのようなことを考えるにつけ、最近の私はこのようなことも考えるようになりました。

人体の52週を考えて、商品をつくる

商品開発を考える際、よく1年を週で割った52週を目安として考えます。1週間は7日間であり、それで1年365日を割ると、約52週間になります。

コンビニの場合は、その52週ごとに新商品を考えて投入していくわけですが、しかし、もう少し突き詰めて考えてみると、単なる区切りとしての52週だけではなく、もっと人体の52週に寄り添ったマーチャンダイジングがあってもいいのではないかと思うのです。

1年は春夏秋冬の4つの季節に分けられますが、その中でもさらに細かく時節は分かれます。「夏」といっても、蒸して雨も多い梅雨の時期と、熱中症になりやすい8月と、そろそろ朝夕には涼しさも感じられるようになる9月を、はたして同じ「夏」と呼んでいいものでしょうか。

初夏、盛夏、晩夏など、ひと夏の移ろいを表す言葉もあります。私たちもその繊細な感覚をもっときちんと意識して商品開発をすべきではないのでしょうか。