1月24日、日本航空(JAL)は植木義晴社長の退任を発表した。植木社長は経営破綻からの6年間、再建のかじ取り役を務め、同社を生まれ変わらせた。ポイントはなんだったのか。『JALの心づかい』(河出書房新社)の著者・上阪徹氏は「『JALフィロソフィ』による意識改革の成果だ」と分析する。その内容とは――。

JALを立て直した「サービス力」向上

2010年のJAL破綻のニュースは社会に衝撃を与えることになった。しかし、さらに社会を驚かせたのが、わずか2年後には、史上最高の営業利益を計上し、再上場を果たしたことだった。

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以後、JALは好調な業績を維持している。2017年3月期のグループ連結売上高は1兆2889億円。営業利益は1703億円。この5年を平均すると営業利益は1800億円台、営業利益率としても14%強で、航空会社としてもハイレベルにある。

もちろん、破綻後に人件費の削減、不採算路線から撤退するなど、厳しい構造改革の結果が今につながっているわけだが、そればかりではない。JALは会社として生まれ変わったのだ。例えば、サービス力の向上である。

JALは、国内最大級の顧客満足度調査「2017年度JCSI調査」で、国際航空部門の「ロイヤルティ(再利用意向)」は5年連続で第1位、「顧客満足」でも第1位を獲得している。

また、リクルートライフスタイルの「エイビーロード・リサーチセンター」が実施した2017年の国際線エアライン満足度調査でも、調査開始以来、初めて総合満足度1位になった。「客室乗務員の接客サービス」部門1位、「空港内の航空会社職員の接客サービス」部門でも1位。つまり、JALはサービス力で高い評価を得るエアラインになっているのだ。

「JALフィロソフィ」による意識改革

この背景のひとつにあるのが、教育への取り組みだ。厳しい経営環境の中で、JALはしばらく教育に大きなコストをかけることができなかった。しかし、人への投資は、じわじわとボディブローのように会社に響いていく。拙著『JALの心づかい』の取材で経営幹部の1人は、人材への教育投資に力を入れることを今は強く意識するようになっていると語っていた。

だが、教育を変えただけでは会社は変わるものではない。実はJALの場合、この教育の中心に据えられている、過去にはなかったものがあるのだ。これこそが、JALのサービスを大きく変えたもの、と言っていいと思う。「JALフィロソフィ」である。