そして、これ以外にも、JALフィロソフィの勉強会が行われている。教育だけではなく、空港ごとに、あるいはパイロットや客室乗務員など部門ごとに人が集まって、こういうときはJALフィロソフィに照らし合わせるならどうすべきか、など頻繁にディスカッションしたりしている。JALフィロソフィをめぐって、こんなふうにコミュニケーションを深めていくカルチャーに、JALは変わってきているのだ。

全世界のスタッフにフィロソフィが浸透

しかも、広がりは世界規模。空港業務に携わるスタッフによるJALフィロソフィに即した行動について発表する「発表会」も年1回、行われている。全世界から選ばれた「空港で働くスタッフ」が、自分はこのJALフィロソフィをこんなふうに体現した、いいサービスができた、という発表をする。同僚や仲間たちと情報を共有した、と世界中からスタッフが集まる。

上阪 徹『JALの心づかい』(河出書房新社)

拙著『JALの心づかい』の執筆にあたって、多くのJALグループのスタッフに取材をした。その中で、全員の口から出てきたのが、JALフィロソフィの話だった。これがいかに社員を変えたか。JALフィロソフィがいかに大切か。その存在を、誇らしそうに語るのである。

なるほど、JALフィロソフィはこれほどまでに浸透しているのか、これほどまでにスタッフに支持されているのか、と驚かれされた。

驚くほど「シンプル」なフィロソフィの中身

では、JALを大きく変え、今やスタッフに広く浸透しているJALフィロソフィとはどのようなものなのか。ウェブサイトでも紹介されている40項目のうち、冒頭の一部を紹介してみよう。

【第1部】
すばらしい人生を送るために
[第1章]
成功方程式(人生・仕事の方程式)
人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力
[第2章]
正しい考え方を持つ
人間として何が正しいかで判断する
美しい心をもつ
常に謙虚な素直な心で
常に明るく前向きで
小善は大悪に似たり、大善は非情に似たり
土俵の真ん中で相撲をとる
ものごとをシンプルにとらえる
対極をあわせもつ
[第3章]
熱意をもって地味な努力を続ける
真面目に一生懸命仕事に打ち込む
地味な努力を積み重ねる
有意注意で仕事にあたる
自ら燃える
パーフェクトを目指す

他にも、「本音でぶつかれ」「率先垂範する」「お客さま視点を貫く」「現場主義に徹する」「成功するまであきらめない」「高い目標をもつ」などがあるが、ざっと斜め読みをしてしまうと、正直、それほど特別なことが書いてあるわけではない、とも思える。果たして、これをベースに行動することで、本当に会社や仕事が大きく変わるのか、と。