JALフィロソフィは、経営破綻から1年たった2011年1月19日に発表された、社員の行動哲学ともいうべきものだ。JAL再生をリードしたのが、京セラ創業者の稲盛和夫氏であることはよく知られているが、稲盛氏が破綻したJALの課題として捉えていたのが、意識の改革だった。リーダー教育を徹底する一方、全社員の意識改革が必要になると考えたのだ。
40項目のフィロソフィを全社員が共有
JALフィロソフィは40項目ある。稲盛氏のリーダー教育に参加していた約50人中、運航、整備、客室、空港、貨物など現場の各部門から10人のメンバーが選ばれ、京セラからアドバイザーも加わり、内容を検討した。
現場の各部門のリーダーが中心になって作られたものだけに、現場に即したものになっているのは、言うまでもない。経営の考え方からリーダーの行動、現場のサービスに至るまで、今のJALのベースになっているのが、このJALフィロソフィなのだ。
自分たちの行動や体現したものが、JALフィロソフィのどこに結びついているのか、ということを常に経営陣や社員は考えるようになっているという。
もちろん、フィロソフィを策定しただけでは、こんなことにはならない。社内にJALフィロソフィを浸透させるべく、徹底的な取り組みが行われてきたのだ。例えば、職場によってはJALフィロソフィの1項目を「今日のJALフィロソフィ」に設定して、それについて「こう実行していこうと思う」「こうすればJALフィロソフィに沿った行動になると思う」といった発表を、毎日のように行っている。
驚かされるのは、策定した6年たってなお、JALフィロソフィを学ぶ教育が行われていることだ。なんとグループ全社員が年3回受講することになっているのである。JALグループの社員は約3万3000人。海外のスタッフや外部委託している航空会社のスタッフも学んでいる。
空港ごと部門ごとでディスカッション
毎回、JALフィロソフィをもとに項目がテーマ設定され、これについて2時間、チームに分かれて討議を行っていく。
現場での取り組み、稲盛氏の講演、植木社長のコメントの紹介、ディスカッション、ワークシートへの記入など、内容は多岐にわたる。参加者は、役員から新入社員まで改装も職種もその都度バラバラ。しかも、5名程度のグループでの参加となるため、みな真剣に教育に向き合う。