「総理を守り支える」という意味で、有能な菅官房長官

――枝野代表は現場感覚があると評価されることがあります。民主党政権時代には、官房長官を務め、東日本大震災も経験された。そういう経験から出てきているんでしょうか。

【枝野】現場感覚、そうですかね。それは、私のキャラクターだと思います。イデオロギーとか、空理空論とかに一貫して関心がないので。

時事通信フォト=写真
――菅義偉官房長官はどう映りますか。

【枝野】総理を守り支えるという意味では、大変有能な、歴代稀に見る、3本の指に入る官房長官だと思います。それが日本にとって幸せかどうかというのはまた別ですが。

――官房長官の仕事の難しさとは。

【枝野】霞が関の調整や、政府与党の調整などの総合的な調整です。それは場合によっては強引に結論を押し付けなければならないこともあります。また、それで不満が前に噴き出しすぎては困るわけです。そういったことを目配りしながら、結論をしっかりと出していっているという意味で菅長官は大変有能な人だと思います。ただ支え、守る対象である安倍晋三首相の向かう方向が間違っていると思うので、せっかくの能力が生かされていないと思います。

――福島第一原発の事故の際、当時官房長官だった枝野さんが全然寝ていないとネットで騒がれました。官房長官とはそれほど大変な仕事なのですか。

【枝野】震災と原発事故のときは特殊な状況ですから、ちょっと比較ができる状況ではないです。ただ、霞が関を総合調整するときの、各役所の癖があるわけですよね。この役所はこういうことに弱いとか、この役所はこういうふうに自分たちの主張を通そうとしてくるとか、そういう感覚は、あのときに知りました。役所によって全然感覚が違うのです。だから、相手を読んで先手を打つことを覚えました。

――今回の新党の立ち上げという大きな決断の中で学ばれたことは。

【枝野】今回の出来事で言えば、結果論ですが、やはりぶれてはいけないということ、その1点です。筋を通すことが大事である一方で、政治は“妥協”でもある。みんなが自分の主張を押し通し続けていたら、何もまとまらないので、基本的には妥協の芸術なんですね。だが、許される妥協の範囲と、越えてはいけない線があって、越えてはいけない一線を越えたら、筋を曲げた、ぶれたということになる。そのラインを見極めるというのは、政治家にとってものすごく難しいが、ラインを越えることになると思ったときには、ぶれないでやってきたつもりです。

――立憲民主党は女性に多く支持されているように見えます。

【枝野】民主党以来の懸案を、今クリアできているんです。圧倒的に男性のほうの支持率が高かったのが、初めて女性のほうが高くなったんですよね。

枝野幸男(えだの・ゆきお)
立憲民主党 代表
1964年、宇都宮市生まれ。東北大学法学部卒業後、24歳で弁護士。29歳で政治家に転身し、衆議院議員に初当選(以後、当選9回)。中学、高校と合唱部に所属し、現在も趣味はカラオケ。双生児の男児の父親。
 
(撮影=横溝浩孝 写真=共同通信イメージズ、時事通信フォト)
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