「俺ってなんていい人間なんだろう」
それには次のように考えるといい。人間を不幸にする考え方には、大きく分けて2つある。それは「誰かに嫌われたら生きていけない(失愛恐怖)」と「失敗したらおしまいだ(失敗恐怖)」。この2つは歪んだ思い込みにすぎず、本当は次のような言い方が正しい。
「人に嫌われないに越したことはないけれど、嫌われたって生きていける」
「失敗しないに越したことはないが、失敗したらやり直せばいい」
さらにこれを、「嫌われたってやっていける」「失敗したってやり直せる」などと自分にぴったりくるフレーズに言い換え、毎日50回大きな声で唱える。
「50回の復唱が済んだらビールを飲んでいいというように、1日で最も楽しみなことをご褒美にすると、続けることができますよ」(諸富先生)
いっぽう医学博士の加藤先生は、「細かいことが気になるのは、意識が内向きになっているからです」と言う。すでに説明したように、現代人は脳の使い方が偏っている。そのためものの見方が自己中心的になり、「他人からよく思われたい」という意識で頭がいっぱいになっているのだ。つまり誰しも潜在的にほめられたいと願っているのだが、それが叶えられない状態にある。
「他人はそう簡単にほめてくれません。それなら自分で自分をほめるしかない。今の時代、自分で自分をほめる能力がなければストレスに負けてしまいます」(加藤先生)
具体的には、「ほめノート」をつくり、1日1回、自分のいいところを見つけて書き込んでいくといい。
「言葉でなく、行為でほめる方法もあります。それは人が見ていないところで善行をすること」(加藤先生)
空き缶が転がっていたら拾い上げてゴミ箱に入れる。自分の机を拭くついでに嫌いな上司の机も拭く。これを「陰徳を積む」と言う。
「陰徳を積むと、『俺ってなんていい人間なんだろう』と自信がつくでしょう。つまりそれが自分で自分をほめるということなんです」(加藤先生)
医学博士。加藤プラチナクリニック院長。「脳の学校」代表。昭和大学客員教授。1万人以上のMRI脳画像とともにその人の生き方を分析する。
諸富祥彦
心理学者。明治大学文学部教授。臨床心理士。千葉大学教育学部講師、助教授を経て現職。中高年を中心に仕事、子育て、家庭関係などの悩みに耳を傾けている。