直感を科学的に取り入れた意思決定手法
他方で北岡氏は、こうしたヒューリスティクスの落とし穴についても「インテリジェンスの失敗の原因となりやすい。あらゆる分析過程で生ずるバイアスの原因」と警告する。思考の積み重ねも組み合わせた直感の欠点を補う分析手法の活用が大事だと指摘する。
実際、米国でのインテリジェンス研究の権威マーク・ローウェンソール氏は「米国のインテリジェンス組織は、9.11に至る過程では直感を軽視し、イラク戦争に至る経緯では直感を重視しすぎた」との趣旨を述べている。何事もバランスが大事というわけだ。
このように直感は様々な欠点があるものの、米軍やCIAのように日本でも活用されるべきだ。しかし、直感を科学的に取り入れた意思決定手法は日本企業では軽視される傾向がある。延々と会議が続いたり、稟議書をだらだらと回したり、昭和なやり方が根強い。
最新テクノロジーや認知科学による意思決定手法などを現実に適用する米軍だが、我々も彼らの思考方法から学び、日々の業務や勉強にもう少し直感を取り入れてもよいのではないか。最近、働き方改革という言葉が話題だが、直感に基づく意思決定や分析の導入は生産性の向上に結び付き、労働時間の削減と経済成長にもつながるだろう。人間の内なる直感を育て、活用するときが日本人にも来ているのだ。
部谷直亮(ひだに・なおあき)
防衛アナリスト。一般社団法人ガバナンスアーキテクト機構上席研究員。成蹊大学法学部政治学科卒業、拓殖大学大学院安全保障専攻博士課程(単位取得退学)。財団法人世界政経調査会 国際情勢研究所研究員等を経て現職。専門は安全保障全般。
防衛アナリスト。一般社団法人ガバナンスアーキテクト機構上席研究員。成蹊大学法学部政治学科卒業、拓殖大学大学院安全保障専攻博士課程(単位取得退学)。財団法人世界政経調査会 国際情勢研究所研究員等を経て現職。専門は安全保障全般。
(撮影=原 貴彦 写真=時事通信フォト)