かっぱ寿司に行く「理由」をつくる

顧客を取り戻すためには「理由」が必要だ。その意味で「期間限定の食べ放題」は「ひさしぶりにかっぱ寿司に行ってみようか」という理由としてはうまくできている。

「食べ放題」を告知するポスター

時間帯が平日の2時から5時までと限られていることから、発表当初は店の運営が比較的暇な「アイドルタイム」の対策のようにも思えたが、主目的はイベントに誘われて顧客が帰ってくる「理由」をつくることだったようだ。食べ放題で「得をした」と感じた顧客が話題を拡散してくれれば、復活は早まる。

「1皿一貫50円」という施策を打ち出すのも狙いは同じだ。回転ずしに来てもせいぜい5~6皿しか食べられない顧客は少なくない。50歳を過ぎれば、誰もがだいたいその程度の食欲になる。少子高齢化の日本だから、小食の人は年々増えている。

そのとき、「ほかでは5種類しか食べられないけど、かっぱ寿司なら10種類のネタが食べられる」ということになれば、それはかっぱ寿司に行く「理由」ができたことになる。

実は、食べ放題、1皿一貫以外に、もうひとつ新プロジェクトをスタートさせている。平日のランチタイム向けに500円以下の「ワンコインランチ」を開発しているというのだ。来年1月をめどに商品化予定ということだが、これも「一度去った顧客が戻って来る理由」としてはうまくストーリーができている。

「悪くはないが驚きはない」

さて、このように作戦は論理的に組み上げられているが、この先かっぱ寿司はどうなるだろう。経営陣には申し訳ないが、私はまだまだ苦戦するだろうと予想している。

先日、かっぱ寿司の都内最大店舗である練馬店で、食べ放題を試してみた。感想を言えば「悪くはない」。もともとそれほど量を食べられる年齢ではないので、家内と分け合いながら18種類のネタを食べた。

すしは私自身も好きなジャンルだ。月に1~2回は都内の高級店で旬のネタを楽しんでいる。このため自分の舌には「おいしいすしなら、ちゃんとわかる」という自負がある。その舌で味わったかっぱ寿司のネタは「悪くはないが驚きはない」というものだった。

一度去った顧客を取り戻すには、なによりも「驚き」が重要だ。高級店で食べるだけでなく、月に1~2回は家族で回転ずしにも行く。最近の一番のお気に入りははま寿司なのだが、それは毎回、ネタに「驚き」があるからだ。

はま寿司には期間限定の「フェアメニュー」と呼ばれる商品がある。今だと四国・九州の活〆ぶりとろ、北海道・三陸産のさんま、広島産のカキフライ、希少なネタであるのどぐろなどが1皿一貫100円~150円で提供されている。これらのメニューが実にうまい。1皿二貫100円の皿よりも割高だが、店に行くたびにその味にうなり、感動する。