習体制が抱える3つの不安要素

一方、日本総研の呉軍華・調査部理事は、趙教授とは違う見方を示す。呉氏は、メインシナリオは「習体制の強化」としつつも、「今回の党大会が終わっても、今後1~2年は権力闘争が続くこともありえる」と予想する。

呉理事によれば、習体制の不安定さを予感させる要素は3つある。1つ目は、習氏の個人崇拝ともとられかねないほど、習氏をほめたたえるプロパガンダが強烈なこと。「これは逆に権力基盤が固まっていないことを表しているのではないでしょうか」(呉理事)。

2つ目は、中国指導層の腐敗を指摘しつづける、米国在住の中国人実業家・郭文貴氏の存在だ。郭氏の情報はフェイクニュース扱いされることが多いものの、彼のバックに共産党の大物がついている可能性は否定できない。そうだとすれば、今後、習体制を揺るがすような腐敗が出てくるかもしれない。

3つ目が王岐山氏の存在そのものだ。「今や習氏に対抗できる力を持っているのは、王氏だけとなりました。もともと王氏は経済・金融には強い基盤を持っており、腐敗撲滅運動の過程で警察にも足場を築きました。影響力という点で習氏が王氏を凌駕しているのは、人民解放軍だけでしょう」(呉理事)。王氏が自らの去就をどう考えているのかによって、習氏が権力基盤を固められるかが左右される。

これからさまざまなメディアで共産党大会の様子が報道されるだろう。注目すべきは常務委員である王岐山氏の処遇にある。ポイントを絞ると、報道のリアリティも変わってくるだろう。ぜひ参考にしてほしい。

(写真=AP/アフロ)
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