王氏が常務委員に残れば習氏の勝利

今回の党大会では、習近平総書記の権力基盤が一段と強固なものになるかどうかが注目されている。そのリトマス試験紙となるのが、「チャイナ7」の一人である王岐山常務委員の処遇である。王氏が常務委員に残れば習氏の勝利、外れれば反習近平派の巻き返し成功というのが、中国研究者の主な見方である。

王氏は過去5年間の習体制において、「党中央規律検査委員会書記」として腐敗撲滅運動の先頭に立ち、辣腕を振るってきた。その結果、かつては不可侵とされた政治局員以上の4人をはじめ、130万人以上の共産党員が処罰の対象になった。腐敗撲滅運動は習氏の権力基盤を固めるうえで貢献したばかりでなく、国民の習人気を支える原動力となっている。

こうした背景から、中国の最高指導部では「習・王連合」と「反習派」の対立構造があると理解されることが多い。だが、王氏は現在69歳。常務委員は68歳定年という慣例があり、慣例に従うのであれば再任は難しいとみられている。

毛沢東が晩年に個人崇拝の闇に陥り、文化大革命で中国を大混乱させた反省から、共産党の指導部は集団指導体制を採用してきた。前胡錦濤政権下では、政治局常務委員のメンバーは9人で、「9人の大統領がいる」と揶揄されるほど権力は分散していた。

慣例を破らずに済む奥の手

だが、現在、習氏は腐敗撲滅による国民的人気を背景に、独裁的な権力基盤を固めつつある。すでに習氏は9人だった常務委員を7人に減らしている。そのうえで、もし習氏が慣例を破り、王氏を常務委員に再任させることができれば、権力基盤の確立が確認できるといえる。

注目すべきひとつのポイントは「習氏が慣例を破って、王氏を再任するかどうか」だが、趙教授は慣例を破らずに、習・王連合を維持する方法があると指摘する。

「『国家副主席』というポストを復活させ、王氏を副主席に就任させるという手がある。これまで国家副主席は名誉職としての意味合いが強かったが、王氏には習氏の最重要課題の一つである『一帯一路』を担当させ、ナンバー2として遇するかもしれない」(趙教授)