「iDeCo」で所得税と住民税が毎年5万2500円も軽減
財形年金や個人型確定拠出年金(iDeCo)がある場合は、60歳まで下ろせない規制がむしろ「定年後の財産」として効果的に働きます。住宅を購入した世代(住宅購入までは住宅財形を使うことが多い)は積極的に使うといいでしょう。
特に個人型確定拠出年金は、掛金相当額については所得控除となるため、掛金の20%くらいを国が税免除したことになり、資産形成のペースを加速させる力になります。なお年収により課税率は異なり、高所得者ほど税率が高くなるため、お得度合いも増す仕組みです。
ここでiDeCoのメリットをおさらいしてみましょう。iDeCoの最大の利点は、月々の掛け金がすべて所得控除の対象になるということです。生命保険や個人年金に加入している場合も所得控除されますが、どちらも所得税で年間4万円、住民税で2万8000円が上限になっています。ところが、このiDeCoは、会社員(企業年金なし)の場合、最大で年間27万60000円分の控除を受けることができます。
私たちが国や自治体に納めている「所得税」や「住民税」は、会社員や公務員の場合、「課税所得」に一定の税率をかけて算出します。課税所得とは年収から給与所得控除、所得控除を差し引いたもので、金額は毎年の「源泉徴収表」に書かれています。
▼15年間で124万2000円が節税されて戻ってくる
iDeCoに加入している人は、1年分の掛け金がこの課税所得から全額控除されます。このため「課税所得」が減り、所得税や住民税も減ります。どれだけ減るのか。試算してみましょう。
課税所得が500万円の会社員の場合、税率はおよそ20%です。iDeCoの掛け金(拠出額)には上限があります。「企業年金なし」の会社員は月2万3000円、「企業年金あり」の会社員と公務員は月1万2000円、会社員の夫を持つ専業主婦は月2万3000円。自営業者は月6万8000円が上限です。
月2万3000円×12カ月で、掛け金は年額27万6000円になります。この額が「所得控除」されるため、27万6000円×0.2(税率2割)=5万5200円が、所得税と住民税の負担軽減分になります。所得税分は年末調整の還付金として(あるいは確定申告の還付金として)戻ってくるほか、住民税分は翌年度軽減された分だけ徴収されます。
たとえば45歳から60歳までの15年間で考えると、iDeCoの掛け金は合計で414万円になります。この分を「年金」として積み立てたうえに、さらに5万5200円×15年=78万7500円が節税されて戻ってくるということです。
税率は所得の多い人ほど高くなるので、iDeCoは高所得な人ほどお得な仕組みになっています。iDeCoの実施主体である国民年金基金連合会のWEBシミュレーターによれば、年収750万円の場合、節税される割合が30%に高まります。毎年8万2800円も浮きますから、15年ではなんと124万2000円も節税されて戻る計算です。(http://www.ideco-guide.jp/simulation/)
さらにiDeCoは「運用益」も非課税です。株式や債券投資などを通じて得た売却益は原則20%課税されますが(復興特別所得税を加えると20.315%)、iDeCoはどれだけ値上がりしても利益に課税されません。年4%の値上がりがあったとして、手取り3.2%に下がるのと4%の利益を再投資するのとの違いは歴然です。老後の資産形成のため、国がどれだけお得な仕組みを用意しているのか、おわかりいただけると思います。使わない手はありません。