そんな元気よく働くメンバーたちを見て、「私もこんな店で働きたい」とパート志願の顧客も次々出てきた。映画「スーパーの女」では主人公がメンバーを元気づけ、閑古鳥が鳴く店を見事に立ち直らせた。渡辺はさながら、ヨーカ堂の“スーパーの男”を思わせる。

開業3カ月経った今も、店内では同業者と思われる背広姿が後を絶たない。

「私は生鮮の精肉出身だけに、生鮮にはこだわっています。そこがヨーカ堂の強みでもある」
「私は生鮮の精肉出身だけに、生鮮にはこだわっています。そこがヨーカ堂の強みでもある」

「私がみんなに話すのは、あれだけ調査すれば、瓜二つの店をつくるのは簡単だよ、と。それをリードするには四輪の完成度をさらに高めなければならない。大切なのは勝ち組であり続けることだと」

渡辺は新しい職場に着任するたびにメンバー全員で記念写真を撮り、離れるときもう一度、集合写真を撮る。初めは元気のなかったメンバーが見違えるように若返る。その変わりようを目に焼きつけ、新しい職場に移るのだ。次の職場ではこれまで以上に完成度を高めよう。そう思って、常に最高の成果を出し続けてきた。ザ・プライス西新井店もそうだ。

その業績好調を受け、2号店が埼玉・川口市に11月14日オープンした。前回同様100人以上が並び、報道陣が駆けつけた。カウントダウンが始まる。5、4、3、2、1。ドアが開く。

「いらっしゃいませ。おはようございます」

渡辺は続々と入店する客にカゴを渡し続けた。「西新井店のメンバーは何の手本もなく、3週間で軌道に乗せた。川口店では2週間、いや1週間でやってみせよう」――。あふれかえる店内を見渡しながら、新たな意欲に燃える“スーパーの男”がそこにいた。(文中敬称略)

(内山英明=撮影)