打ち上げ失敗の絶望、そして直前の緊急事態――。さまざまな極限状態をどう乗り越えてきたのか。この道一筋33年、日本の先端技術を担う技術屋の熱き闘いのすべて。

部品点数100万点以上、製作1年半が30分で消える

「マイナス270秒か……」

前村孝志は、無意識に呟く。機械音にも似た女性の声によるカウントダウンは継続していたが、発射管制指揮者は打ち上げを止めた。予定の270秒前に。

<strong>前村孝志</strong>●H-IIAロケット打上げ実施責任者。技監・技師長、宇宙プログラムオフィス長。1951年、和歌山県生まれ。県立桐蔭高校、早稲田大学理工学部卒業。75年、三菱重工業入社。名古屋航空機製作所で、液体ロケットのエンジン、機体の開発や打ち上げにかかわる。2006年より現職。
前村孝志
H-IIAロケット打上げ実施責任者。技監・技師長、宇宙プログラムオフィス長。1951年、和歌山県生まれ。県立桐蔭高校、早稲田大学理工学部卒業。75年、三菱重工業入社。名古屋航空機製作所で、液体ロケットのエンジン、機体の開発や打ち上げにかかわる。2006年より現職。

総合司令塔に、ため息が漏れる。「風が強いですからね」と、誰かが言う。