ヤマトはできる限りのことはしてきたが……

「ヤマトとアマゾンの事例はインパクトこそ大きいものの、氷山の一角。日本の物流そのものが大きな転換期を迎えていると認識するべきです」

そう指摘するのは物流情報専門誌『カーゴニュース』を発行するカーゴ・ジャパンの西村旦社長だ。

「ヤマトへの非難は理解できます。ただ、今回の値上げはアマゾン取り扱いによる負担増だけが理由ではなく、ECの爆発的な伸び、労働コストの上昇が想定を超えたため、というのが公式見解。私もヤマトはできる限りのことはしてきたと感じています。根はより深いところにあるのです」

西村氏によれば、バブル崩壊以降、30年近く手をつけることができなかった問題が、いよいよ臨界を迎えたことこそが本質だという。

そもそものきっかけは1990年に始まったトラック運送業の規制緩和だ。当時、4万だった事業者数は、今では6万超と1.5倍になっている。一方で、国内貨物輸送量は右肩下がり。トンベースではピークだった91年と比較して3分の2まで落ち込んだ。

事業者数の増加は過当競争を呼ぶ。認可制だった運賃が自由化されたことで、運賃を下げてでも仕事が欲しい事業者によりダンピング合戦が勃発。必然、ドライバーの給料も安くなり、業界が敬遠され、人手不足に陥る。

「普段はそれでも何とか回っているから気づきにくい。しかし、12月末や3月末の繁忙期はこれまでもギリギリの状態だったし、消費増税前の駆け込み需要も、物流関係者は冷や汗ものだった。次、荷物がグンと増えたら、いよいよダメかもしれないと感じている関係者は多いんです」(西村氏)

この4月、ヤマトはアマゾンの当日配送からの撤退を発表したが、実は昨年末の時点で、ヤマトはパンク寸前の事態を経験しているという。

「前の日に届け切れなかった荷物が残ることを残荷といいますが、残荷は非常にまずい。営業所で残荷が積み上がっていくと、オペレーションは煩雑さを増し、混乱をきたします」(同)

セールスドライバーが荷物をあらかた配り終えた夕方になって、当日配達の荷物がドカンと運び込まれる。そこからもう一度配達に出なければならないし、不在で持ち帰る荷物もある。これが営業所の残荷を増加させることにつながり、ただでさえ忙しい年末にとうとう爆発したということだ。