だれもが「人口減少社会」から目を背けている
「みなさんが『市の施設って何』と考えて羅列できるもの、その大半が夕張から消えた。でも市は必ず再生する」。絶望的な財政破綻から10年、北海道夕張市の財政再建の抜本的見直し案が今年3月、国に認められた。これまでの財政再建一辺倒から、10年間で総額113億円の新規事業をスタートし、地域の再生にも取り組む。
民間シンクタンク「日本創成会議」は2014年、40年までに全国の約1800市町村のうち、その約半数である896の自治体が消滅する恐れがあると発表した。25年には東京の人口も減り始める。夕張市の鈴木直道市長は「五輪後、東京の人口減が到来する。その前に手を打たないといけない」と警鐘を鳴らす。いまだ多くが目を背ける人口減少社会の「受け入れ方」を聞いた。
高級メロンの産地として知られる夕張はもともと炭鉱の街だった。石炭から石油へのエネルギーシフトで1990年までにすべての炭鉱が閉山。栄えていた当時は11万人以上も住んでいたが、今では約8500人にまで人口が落ち込んだ。
夕張市はその後、観光業への注力を始め、リゾート開発に取り組んだ。しかし、リゾートブームは去り財政が悪化。06年には約353億円の巨額赤字を抱えての財政破綻を表明し、翌年に財政再建団体の指定を受けた。
小学校の数を6から1に統廃合
以降、夕張市はありとあらゆる行政改革を実施してきた。市の面積は東京23区よりも広いが、小学校の数を6から1に統廃合した。図書館や市民会館も閉鎖されることになった。
市が交付していた補助金にもメスを大胆に入れた。「選挙もあることから市長は市の団体への補助金には手が出せないことも多いが、全廃した」。交通安全の旗振りの旗も市民に購入してもらった。財政再建の抜本見直しで改善したが、市民税は法律上の上限まで破綻当時は引き上げた。
市役所職員も追い詰めた。約400人いた職員を約160人まで減らし、残った人も年収を最大で40%カットした。「職員に犠牲になってもらうしかなかった。10年で身も心もだいぶ磨り減らしてしまった」。
一方で市長も自身の報酬を7割カット。昨年度の年収は251万円だった。市長として日本一薄給だという。交際費、退職金に至っては0だ。「ある市長からは『頼むから君の給料を元に戻してくれ。こっちの市民から、あんたも夕張市長を見習って給料を下げろ、とお叱りを受けるんだよ』なんて言われた」と苦笑いする。