2900万円の減収分をどうカバーするか

さて釜石SWのクラブ存続は一時、不透明となった。某主力選手は「もう、アカンでしょ」と漏らしていた。

そんな不安や猜疑心が選手の間に蔓延していく。増田は怒った。「あかんでもなんでも、いまやることをやったらいいんじゃないの。希望を捨てたら終わりでしょ」と。

釜石SWが新日鉄から支援継続の確約をもらったのは3月20日前後だった。その後、事務局をシープラザから、釜石SWのクラブハウスに臨時移転する。3月25日。釜石SW・RFCはホームページで「サポーターの皆様・スポンサー・パートナー・法人サポーター支援企業各社の皆様」宛に、それまでの支援の感謝と「チーム存続」の宣言をアップした。

「人」「モノ」「カネ」でいったら、「人」「モノ」は大丈夫だった。一番の問題が「カネ」だった。

選手は34人。10人がプロ契約選手で、残りの半分が新日鉄社員、もう半分が新日鉄以外の社員となっている。職場が津波で流された選手もいる。

昨季の年間運営費では収入が8200万円、支出は7500万円だった。トップチャレンジ進出に備えていた予算を使わなかったため、1200万円を今年度に繰り越すことになった。

昨季の収入では、個人サポーター、法人サポーターを合わせて約2500万円、スポンサーが約4300万円となっていた。スポンサーのうち、大口スポンサーとして新日鉄がその半分、2000万円以上を支援している。

今回の震災の影響で、パートナー、スポンサー、会員収入は大きな打撃を受けることになった。欠損状況を試算すると、個人、法人サポーターは約2100万円のマイナスとなり、スポンサーが800万円ダウンで、合わせて約2900万円の減収予想となった。

試算では、個人会員では1600人のうち、700人から会費徴収不能という見通しをたてた。

増田が説明する。

「単なる予測の数字でしかありません。被災地をレベル分けし、減収予測を組みたてています。収入で甘く考えたらロクなことはないので、明らかに厳しめに算定しています」