こういう窮地のときこそ、地域クラブの存在意義が問われる。

増田は言う。

「非常に複合的な問題だと思う。やっているスポーツがメジャーではないラグビー、しかも場所が東北の地方です。選手はアマチュアなのか、プロなのか。そこにはスポーツのクラブが日本でどう生きていくのかが問われているのです。そんなことをひっくるめて、釜石SWは挑戦しているのです」

釜石SWは企業スポーツとも、プロクラブとも違う。こういう地域密着の組織を強くするためには、「縛らないこと」が大事だという。

「がんじがらめにされると、誰だって自分でやろうとしない。自分でやろうという人が集まれば、これほど強いクラブはない。ましてやボランティアでやっている地域クラブですから」

トップイーストにあえいでいたところ、皮肉にも、今回の震災で全国に釜石SWという名前が知れわたることになった。このチャンスを生かさない手はない。クラブ運営を強固にし、ファンを拡大するためには、「強くなることが一番」なのである。

ここ3年はトップイーストで、6位、5位、4位と順位を上げ、トップリーグ昇格も見えてきた。選手の質も士気も随分、高まってきた。いまは選手にラグビーへの迷いがない。夢はトップリーグ昇格、と増田は言い切った。

「いつかは日本一奪還が宿願です。でも、まずトップリーグ。ことしが勝負です」

災い転じて福に。ピンチをチャンスに。ひたすら。ひたむきに。震災で釜石SWがたくましく変ぼうする。