2900万円の減収と考えた場合、支出構造を絞り込む必要が出てくる。他チームの支援を受けることで招待試合の遠征費をカットし、日本ラグビー協会の登録料免除、機関紙の経費も削ることができる。トップチャレンジ進出遠征費を2000万円としても、前年からの1200万円の繰越金があるから、収支はとんとんとなる。

これに努力目標をプラスしていけば、釜石SWの財務体質は強化されていくことになるのだ。個人、法人サポーターの存続、拡大、または新規契約で1500万円は獲得したい。義援金(7月末で約1000万円)なども加えると、震災の影響による減収分に近い数字を得ることができるのだった。

増田は漏らす。

「収支の見通しは大丈夫だと思います。“任しておいてください”と言うしかありませんから」

こういった収支状況・予算案は5月の釜石SWの理事会で承認された。不確定要素はあるものの、正式に「クラブ存続」が決まったのである。

スポンサー集めを考えたとき、釜石SWは恵まれていた。新聞、テレビで大々的に、かつ好意的に取り上げられたからである。

「チームが優勝したぐらい大きく扱ってもらえました。営業するとしたら、こんないいことはない。クラブの説明をしなくても、もう内容をわかってもらっていますから」

釜石SWのスポンサーになると、ユニホームに企業ロゴを入れることになる。法人パートナーでも50万円以上だと、試合会場(岩手県内)でバナー広告を付けることになる。

「不思議なのは、カネは出すけど、別にユニホームやバナー広告に企業名を付けなくてもいいよ、という会社があることです」

これは純粋に地域密着の釜石SWというチームが愛されている証左だろう。企業にとっては「CSR(企業の社会的責任)」の一環なのか。

「3年で現状復帰できるだろうか」と、増田は当初、不安に思った。そのときの日誌にはこう、書いた。〈倒れたものを安易に建て直すと、さらに危険を伴うことになる〉と。

震災で倒れかけたクラブを急速に建て直すと、逆に危険なのではなかろうか。組織として、財務体制として、盤石の形をつくれるのか。