2009年から12年まで『週刊現代』の編集長を務めた鈴木章一氏(現・講談社取締役)は、当時マンネリ化したヘア・ヌードに代わる売りもの企画を考えていた。サラリーマン雑誌を標榜してきた『週刊現代』だが、読者の年齢層は年々上がり、団塊世代が中心になって来ていた。
「死ぬまでSEX 死ぬほどSEX」戦争
そこで、いくつになってもセックスを楽しもうという大特集を組んだら、見事にヒットし売り上げは急増した。
いくつになってもセックスは楽しめる。60代、70代、80代、そして90代までエスカレートしていった。
ライバル誌の『週刊ポスト』は、一時、ヘア・ヌードはやらないと宣言して部数を落とし、あわてて再開するなど迷走していた。
部数低迷の救世主として『週刊ポスト』の編集長に就任した飯田昌宏氏は、さっそく誌面の改革を行う。現在も同誌編集長を務めている飯田氏は、私へのメールでこう書いてくれた。
「私が編集長になる前年くらいから、『週刊現代』に復帰された鈴木章一編集長が、これまでとは考えられない大ページ数を割いてSEX特集を組み、これが非常に売れていたので、当方も負けてはいられない思いで、編集長に就いた2010年夏くらいから追随したと思います。もとよりSEX特集のノウハウ、スケベ度については雑誌としても個人的にも負けない自信がありましたので」
かくして現代とポストの「死ぬまでSEX 死ぬほどSEX」戦争の幕は切って落とされたのである。飯田編集長は読者の反応にびっくりしたという。
これまでの「定説」などは嘘っぱちだった
「大きな反響に正直、驚きました。これまでのSEX特集は、『GORO』や『スコラ』などの若者へのハウツーに始まり、ポストでも壮年、中年層への娯楽として提供していたと思いますが、シニア層がこれほどSEX記事を渇望していたとは」
年をとれば性に対する関心は薄れていく、というこれまでの「定説」などは嘘っぱちだった。もちろんその背景にED薬があることは間違いない。
「認識を新たにしたのは、ちょうど定年にさしかかっていた団塊世代の読者が、その年齢にさしかかっても健康(長寿)への関心=長寿欲、投資、財産運用、年金への関心=金銭欲、そして女性への関心=性欲への異常な強さを持っていることでした。この欲望の強さは、彼らより若い世代、現在の若者たちよりもずっと強いのではないでしょうか。そこで誌面でも、こうした団塊世代向けのSEX記事を意識して特集するようになりました」(飯田編集長)