宮城県気仙沼市が、地域一体となった「観光経営」に取り組んでいる。きっかけのひとつは、「ほぼ日」を運営する糸井重里さんからのダメ出しだった。「風光明媚で、食がおいしい」は至るところにある。気仙沼が目指すべき観光とはどんなものか。2012年以来、5年半ぶりに当地を取材した経済ジャーナリストがリポートする――。

本気のイベントだから「すべて有料」に

本格的な「夏の行楽シーズン」を迎え、国内の観光地が集客に力を入れている。各地の商業施設や観光施設が独自で行うケースもあれば、地域一体で取り組むケースもある。後者の取り組みで興味深いのが、宮城県気仙沼市だ。太平洋沿岸の漁業が盛んな街で、学校の授業で習った「リアス式海岸」でも知られる。

現在、気仙沼が行うのが「ちょいのぞき 気仙沼」というイベントだ。7月から9月までの夏季メニューを実施中だが、10月以降も継続予定となっている。現地で配られる小冊子には、日時を記したカレンダーと簡単なイベント内容が紹介されている。

(上から)リアス式海岸が美しい気仙沼の街なみ/気仙沼商工会議所の菅原昭彦会頭(老舗蔵元・男山本店社長)/「ちょいのぞき気仙沼」パンフレット

たとえば8月13日と20日の日曜日には「氷の水族館の舞台裏を探検!」(一般1450円、小学生800円、未就学児無料)という企画がある。6年ぶりに復活した人気施設「氷の水族館」の裏側をのぞき、マイナス10℃の冷凍庫に入る体験も行う。9月3日(日)には「モーターパラグライダー遊覧飛行体験」(一般8000円、小学生7000円、未就学児7000円)が開催予定で、インストラクターと一緒にパラグライダー飛行ができる。

ホテルで見かける「期間限定イベント」をまとめた形だが、すべて有料なのも特徴だ。その狙いを気仙沼商工会議所の菅原昭彦会頭(老舗蔵元・男山本店社長)はこう語る。

有料にしたのは、実施する側が本気になるからです。企画する各社の方にも『顧客満足と利益確保が両立できる、おもてなしイベントにしよう』と話しています」

冊子が30種類も重複していた

「ちょいのぞき」というキャッチコピーも、これまでの反省からきたものだ。

「観光訴求を打ち出すために、過去のパンフレットを見直ししたところ、同じような冊子が30種類も重複していました。観光業者に説明に行った時も『気仙沼は何を考えているのか、非常にわかりにくい』と言われたこともあります。そこで私よりも若い30代や40代の発想も生かし、お客さんに訴求できる見せ方を考えていきました」(菅原氏)

そう話す菅原氏もまだ55歳。商工会議所の会頭就任は51歳で、地方の商工会会頭としては屈指の若さだ。これも取り組みの柔軟性を後押ししていると感じる。