「水産」「観光」を連動させた地元企業
もともと漁業の街である気仙沼は、地域経済の8割を占めていた「水産業」が震災と津波で95%の製造・貯蔵設備が被災するという壊滅的な打撃を受けた。6年がたち、徐々に回復してきたが、震災以前には戻り切っていない。そこでもう1つの地域資源である「観光業」の強化を図るのだ。
実は、気仙沼にはモデルケースとなる会社がある。地元大手企業の阿部長商店だ。水産事業部と観光事業部が事業の柱で、観光部門では気仙沼市と南三陸町に「ホテル観洋」など3つのホテルを運営する。地震と津波で、水産加工工場9拠点中8拠点が被害を受けたが立ち直り、前期の売上高は約142億円と震災前の売上高に並んだ。
復活要因には、気仙沼の特産物を一般消費者向けに新開発した食品もある。たとえば震災後に手がけた「気仙沼ふかひれ濃縮スープ」(ホテル観洋グループ総料理長監修)や、「ajillo×アヒージョ」シリーズは大ヒットとなった。水産部門と観光部門が連携した成功体験があるのだ。他社と地域一体活動も行う、社長の阿部泰浩氏(54歳)はこう話す。
「気仙沼の『観光経営』には、当社の取り組みも“縮図”となるように思います。地元の観光意識も変わり、『気仙沼には何々の特徴があります』と具体的になりました」
生鮮カツオ20年連続日本一だが…
地元食材を使った具体的な訴求が「気仙沼 メカ×カレー」だ。全国の生鮮水揚げ量の7割以上を占める「メカジキ」をカレーの具材に使ったもの。市内のカフェや飲食店ではカレーライスだけでなく、カレー味の唐揚げやカレー風味のソースカツ丼といったメニューもある。
「もう1つの気仙沼名物『サメ(フカヒレ)』と同じ漁船で捕獲でき、一年を通じてとれるのもメカジキの強みです。地元では肉代わりの食材としても使われるので、夏以外の時期は『メカしゃぶ』『メカすき』といった鍋物メニューも開発しました」(菅原氏)
「冬に弱い気仙沼」という短所の克服も目指す。阿部長が運営するホテルには天然温泉もあり、イベントや食と一体の宿泊で、冬でも観光訴求ができるようになった。
ただし、活動は道半ばだ。生鮮カツオ20年連続日本一を誇り、今年から毎年7月の第3月曜日の「海の日」を「気仙沼かつおの日」と定めたが、7月20日(海の日)当日は盛り上がらなかったのだ。準備不足も原因だったが、取り組みへの課題と反省点が残った。