受付から電子決済見守りや防犯まで

【田原】お金と技術があって、委託先もあった。条件はそろいましたね。

【永守】自慢したいのですが、私たちは15年7月に会社をつくって、16年1月のラスベガスの世界的展示会であるCESでタピアを発表しました。そこまで半年。16年6月末に販売をスタートしたので、企画から販売まで1年というスピードでした。

【田原】すごいスピード感ですね。どうしてそんなに早くできたのですか。

【永守】逆に、他社はなんでそんなに時間をかけているのかと聞きたいくらいです。おそらく日本企業は、コピーされないような完璧なものをつくろうという発想なのでしょう。私たちはアジアの発想で、コピーされたらこっちもやり返すぞという勢いでやっています。

【田原】こういうロボットはほかから出てないのですか。

【永守】出す出すと言っている会社はアメリカを含めていくつかあります。でも、今日の時点で一般向けに販売されているのは、私たちのタピアと、シャープのロボホンだけかな。

【田原】何台くらい売るつもりですか。

【永守】今年中に10万台が目標です。仮に、企業の受付だけでも10万台を超える市場があります。さらにBtoBはさまざまな活用が考えられる。ある商社さんが全国の小中学校4万校と契約していて、教室でいえば100万クラスあるそうです。その1%にタピアを置いてもらえば1万台。ほかに塾なども考えられます。

【田原】将来はロボットだけですか?

【永守】購入してもらった後の世界で利益を生まないといけません。わかりやすいのは買い物でしょうか。タピアにはNFCがついていて、電子決済が可能です。さらにいまは視覚のAIの開発に力を入れています。

【田原】視覚のAI?

【永守】見たものをテキスト化するAIです。これができると、おばあさんが部屋で転倒したとき、それを目撃したタピアが家族に「おばあさんが倒れました」とショートメッセージを飛ばせます。あるいはいままで映像を巻き戻してチェックするしかなかった防犯カメラも、テキストでログファイル化されていれば簡単に調べられるでしょう。こうしたAIをタピア以外のロボットやカメラに積んでもらえば、大きなビジネスになります。

【田原】タピアはお払い箱ですか。

【永守】タピアは必要です。映像をテキスト化するAIは他社も開発していますが、私たちはロボットという武器があるので、実際にタピアに搭載してユーザーの反応を早くダイレクトに聞くことができます。それは他社にない強みです。

【田原】最後に一つ。ロボット事業で日本電産とタッグを組むことは?

【永守】関係はしたいですよ。でも、相手はいわゆる大企業。NECさんとか日立さんとつきあうのと同じぐらい難しいと思います。身内だからといってハードルを下げるような甘い父親ではありませんから(笑)。

永守さんから田原さんへの質問

Q. 高齢になっても元気で働ける秘訣は?

永守さんのお父さんに聞いたほうが早いんじゃないかな。72歳だそうですね。まだお会いしたことがないですが、バイタリティ溢れる方だと聞いています。その血を受け継いでいる永守さんは心配いらないはずです。

質問にお答えすると、元気の秘訣は好奇心です。僕は新聞を6紙取っていて、各紙で違うことが書かれていたら、記者や関係者に直接電話して確かめます。わからないことを放っておけないタチで、待っていられないのです。

ちなみにジャーナリストの池上彰さんは、地方紙も含め10紙読むと言っていました。あの人も元気ですよね。知識の欲があると、人は年を取らないのかもしれません。

田原総一朗の遺言:知識に貪欲になれ!

編集部より:
次回「田原総一朗・次代への遺言」は、dely 代表取締役 堀江裕介氏のインタビューを掲載します。一足先に読みたい方は、6月12日発売の『PRESIDENT7.3号』をごらんください。PRESIDENTは全国の書店、コンビニなどで購入できます。
 
(構成=村上 敬 撮影=宇佐美雅浩)
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