2000年代後半、腹痛で政権を放り出し支持率低迷を招いた安倍晋三総理、そして実際に政権を失った麻生太郎元総理、いまやその2人が自民党の双璧だ。祖父は吉田茂元総理、さらに辿れば元勲・大久保利通や皇族の親戚も多く、安倍総理とも遠縁。実家の会社社長を経て1979年に初当選。「半径2メートル男」と言われるように直接話せば気さくで明るい人柄に魅せられる人も多く人気が上昇。08年には総理にまで上り詰めた。だが、医療費削減に絡み「たらたら飲んで、食べて、何もしない人の分の金を何で私が払うんだ」と発言し、「病人を鞭打つ」と批判され謝罪。直らぬ失言癖も政権転落の大きな原因だった。
現政権下でも「ヒトラーは民主的に議会で多数をとった」、憲法改正で「ナチスの手口を学んだらどうか」と発言。ナチ党は複数政党での選挙では単独で過半数を占めたことはないし、暴力による弾圧も繰り返した。一昔前なら辞任モノだが、最近は社会が温かいのか鈍感なのか益々盤石。周辺に「野党がダメだから、党内で疑似政権交代が必要」と語り、次の政権構想すら練っている。
祖父・吉田を継ぐ池田勇人元総理創設の派閥「宏池会」出身。同根の麻生、谷垣、岸田の3派閥を一体化し、安倍(清和会)一強に対抗する「大宏池会構想」を画策。「一強はやがて独裁となる。調整重視が対立軸。しかし麻生は安倍に近すぎて信用できない」とは「3派閥」のある中堅議員。安倍総理との決別なくして、「大宏池会」は難しそうだ。
副総理・財務大臣・内閣府特命担当大臣(金融担当) 麻生太郎(あそう・たろう)
1940年生まれ。学習院大学卒。麻生セメント社長を経て政界入り。内閣総理大臣(第92代)を務める。
1940年生まれ。学習院大学卒。麻生セメント社長を経て政界入り。内閣総理大臣(第92代)を務める。
(写真=AFLO)