日本人の死因順位/病気別一般診療医療費

日本人の死因順位/病気別一般診療医療費

国連が定めた世界糖尿病デーの11月14日を前に、徳島県立中央病院の正面玄関前にある「徳島県の木」ヤマモモが、4000個のLEDで青くライトアップされた。同時期に、県内3カ所で開かれた運動習慣をつける歩行大会は「ブルーライト・ウオーキング」と名付けられていた。この時期、徳島県では糖尿病啓発活動のシンボルカラーの青は不可避の色となっている。

予備軍を合わせると国内に約2200万人いるといわれている糖尿病。カロリーの摂りすぎ、不規則な食事、運動不足などの生活習慣の乱れが原因といわれる糖尿病の患者が、徳島県では圧倒的に多いのである。

徳島県は糖尿病での死亡率が07年に全国ワースト7位となり、「汚名をそそいだ」といわれたことがある。それというのも、07年以前の14年の間ずっとワースト・ワンを継続し続けていたからである。

05年に県が「糖尿病緊急事態宣言」を出し県民あげての脱糖尿病運動が定着したのかとの観測が流れたのだが、どうやら7位は一時的なものだったようで、08、09年と2年連続して再び全国ワースト・ワンの座に返り咲いてしまった。11月14日に限らず、県内のいたるところで年中ブルーライトを灯さなければならない徳島県なのである。

糖尿病には肥満が一番よくないということで、県は食べすぎと運動不足解消を県民に訴える施策を展開中だ。

例えば、県教育委員会が、県内の小学5、6年生約1万4300人全員に歩数計を貸与したのもその一環。地図上に歩いた距離を記入して四国遍路を疑似体験させ、楽しみながら歩く習慣づくりを始めようという試みである。児童たちを、糖尿病予備軍にさせないための歩数計である。

09年の「全国体力テスト」の実技によると、徳島県の小5男児は全国最下位、女児も41位と、自然の豊かさを謳う県にしては野性的な逞しさが欠如していることが明らかになっている。四国霊場88カ所が記入された地図の上に実際に歩いた歩数を距離に換算して書き入れていくことで少しでも歩くという運動を習慣付けようという試みだ。ちなみに遍路道は約1400キロメートルあるから、子どもの足で1日1万歩進んでも「結願」まで9カ月ほどかかることになる。

子どもだけではない。大人も歩く。県と徳島大学、県医師会などは2010年秋、2泊3日の「ヘルス・グリーン・ツーリズムin徳島~メタボ・糖尿病克服のための遍路旅」を主催した。また11年3月に開かれる

「とくしまマラソン」参加者には、糖尿病や肥満改善の練習方法など、実践的な講義を行うプログラムも予定している。

糖尿病患者が運動を続けていると、その間は血圧が下降し、善玉コレステロールが増加するというデータが報告されている。運動の基本である歩くことに、糖尿病王国の県は脱出の糸口を求めているのである。2010年10月31日に徳島大学で開かれた市民公開講座で、パネリストを務めた田中宏暁・福岡大学スポーツ科学部教授は、「スロージョギング」の効用を説いている。これは、同距離を走るのと歩くのでは、走るほうが歩くよりも倍のエネルギーを消費するのだが、だからといって速く走ってもゆっくり走っても、その消費量は変わらない点に着目した運動法だ。平たく言えば、無理なくゆっくり走るのがもっとも効果的だということ。高齢者にも適した「スロージョギング」の普及を進めようとしているのだ。

徳島といえば阿波踊りが有名だが、その阿波踊りを徳島大学スポーツ社会学の教授らがアレンジした「阿波踊り体操」なる脱メタボの運動がある。DVD化し県内各地の運動教室などで親しまれているものだ。

糖尿病での死亡率がワースト7位に改善されたとき、いろいろな施策に取り組んでいた徳島県保健福祉部を取材したときに担当者はこんな話をしていた。

「阿波踊り体操や食物繊維たっぷり料理教室の開催などで肥満解消に努力しています。連続ワースト・ワンが途切れたので効果が出ているのかもしれませんが、油断なく危機感をもってやっていきます」

やはり油断だったのだろうか、ワースト・ワンはすぐ復活した。脱糖尿病は、運動を無理なく継続することからはじまる。「踊る阿呆」に「歩く阿呆」「走る阿呆」は、意外にもその近道といえそうだ。