2010年4月、秋田県庁の健康推進課に、「特命」を帯びたセクションが誕生した。前年の4月に就任したばかりの佐竹敬久知事肝煎りのプロジェクト・「ふるさと秋田元気創造プラン」のなかで謳われている、がん対策を総合的に行う部署だ。その名も「秋田県がん対策推進チーム」。スタッフ7人をまとめるチームリーダーの金子治生氏が、設立に至った経緯をこう話す。
「ご存じのように秋田県では毎年3000人以上の方ががんで亡くなっておりまして、これは大変な事態に直面していると考えております。そこで県のがん対策の基本プラン実現のためにこのチームは発足しました。まずは今まで2つに分かれていた医療提供の体制と予防・検診の窓口を一本化し、総合的にがん対策と取り組んでいくシステムを構築しました」
秋田県では、がんの死亡率上昇に歯止めがかからなくなっている。
人口10万人当たりのがんで亡くなった人の数(死亡率)は、1997年に296.0人を記録した。これは当時、全国で最も高い数値で、初めて全国ワースト・ワンとなってしまったのだ。ところがこれ以降も死亡率は上昇し続け、2009年までなんと13年連続してその座に君臨中(?)なのである。
しかも09年に新たにがんと診断された患者は前年より1031人増えて過去最多の7979人。同年のがん死亡者はついに4008人にまで膨れ上がっている。これを死亡率でいうと366.7人。全国平均が273.5人だから実にその1.3倍以上となっているのだ。特に食道がん、結腸がん、直腸がんは全国ワースト・ワンを独占している。肝臓がんだけは30位台だが、前立腺がん(12位)や乳がん(16位)も、やはり油断ならない位置を占めている。
こうなるともはやがんは秋田県民にとって「県民病」といっていい。じっと手をこまねいていることのできない、早急に手を打たなければならない戦いとなっているのだ。
では、なぜ秋田県民はがんに罹ってしまうのだろうか。その原因を、前出のチームリーダーの金子氏に問うてみた。
「しょっぱい食べ物を多く摂るからだ、アルコールの消費量が高いからだとか、いろいろいわれていますが、実は地元の病院に聞いても決定的にこれだといえる因果関係は、正確にはわからないとされているのです」
そこで彼らが導き出した解決策が、早期発見と早期治療の重要性だった。県では、人間ドックを含むがん検診の受診率に注目しているという。毎年新たに見つかるがん患者数を100とすると、そのうちがん検診で見つかった患者数は06年から09年までが16.9%、19.3%、17.5%、17.9%でしかない。つまり8割を超すがん患者は、体調不良など何らかの自覚症状を覚えて病院を訪れ、そこで初めてがんと知らされていることになる。