本藍染の産着を桐箱に入れる理由
【田原】本藍染の赤ちゃんの産着は、靴下とタオルとセットで桐箱に入ってますね。いくらですか。桐箱に入っていると高級そうです。
【矢島】『徳島県から本藍染の出産祝いセット』は、桐箱に入って2万5000円です。桐箱に包んでいるのは、二度贈るご出産祝いにしていただきたいという想いからです。まず、赤ちゃんが生まれたときに贈りますよね。その子が大きくなれば、産着は着られなくなります。ただ、捨てる必要はありません。お子さんが大きくなって将来子どもが生まれたときにもう一回贈って、代々受け継いでいってほしいのです。成長の過程でたくさん写真を撮ったり、お子さんに向けて手紙を書くお父さんお母さんは多いと思いますが、そういったものを桐箱に一緒にしまっておくのもいいのではないでしょうか。
【田原】なるほど、値段はどうやって決めているのですか。
【矢島】いまシリーズ数は29、色違いも含めてアイテム数は60種類以上ありますが、お客さんがいくらで買いたいかではなく、職人さんや配送する方など、関わったみなさんが継続できる価格にしました。職人さんが食べられないし人も雇えないという価格では、伝統産業のお仕事を辞めたほうがいいという話になってしまいます。商品に同封する説明のしおりも丁寧につくっています。
【田原】矢島さんはそれまでビジネスのご経験がなかった。どうやって売ろうとしたのですか。
【矢島】まずオンライン直営店をつくりました。あとは手売りです。出産祝いセットはつねに持ち歩いていて、いろんな人に会うたびにご覧いただきました。
【田原】商品をつくるほうはどうですか。すぐにできました?
【矢島】会社を立ち上げてからブランドをはじめるまで1年かかりました。会社の立ち上げは一人。そこからデザイナーさんや職人さんを探して商品開発していたら、あっという間に1年が過ぎてしまって。
【田原】その間、売上はなしですか。
【矢島】最初はブランドがなかったので、矢島里佳としていただけるお仕事で、がんばって「和えるくん」を育んできました。あ、私たちは会社を「和えるくん」と呼んでいて、我が子のように育てています。
【田原】たとえばどんなお仕事?
【矢島】収入として大きかったのは、経産省の「クールジャパン戦略推進事業」のビジネスコーディネーターのお仕事です。職人さんのつくっている商品を私が見つけてきて、それを海外に紹介するお手伝いをさせていただきました。
【田原】なるほど。その仕事で何か得たものがありましたか。
【矢島】フランスの方とお話したときに、「日本はいとこみたい」と言われたことが印象に残っています。日本は圧倒的に洗練された技術があって、商品のクオリティが高い。フランスは物を大事に使って代々引き継いでいくが、日本も同じで、まるで親戚のようだというのです。フランス人は日本がアジアのどこにあるのかさえ知らないかもしれないと私は思っていたので、そう言ってもらえて素直にうれしかったです。