白人至上主義は保守ではない

ACUのダン・シュナイダー事務局長が「オルト・ライトはまったく保守ではない」というタイトルで講演して過激な団体に一発かます場面もあったが、参加している保守系団体も一枚岩ではなく、個々の政治的な主張の相違は存在しているものの、「小異を捨てずに大同の下に結集している」ことがアメリカ型イベントの特徴であろう。

トランプ政権と共和党連邦議員はこれら保守派の人々が求める減税を重視する税制改革を推進する圧力の下に置かれている。CPACの会場に押しかけている保守派のリーダーたちの背後には彼らによってネットワーキングされた保守派の有権者集団が存在しており、それらの人々がトランプ政権の減税政策に大きな期待を寄せている。トランプ大統領が準備している減税政策は共和党保守派にとって改革の本丸だ。トランプは自身を当選に導いた保守派勢力の意向を受けて税制改革を推進していかざるをえない。

そのような背景の中で、トランプ政権初の予算教書が3月16日に連邦議会に示された。その際、トランプ政権がかねてからアナウンスしていた「歴史的な税制改革」の公表は先送りされることになった。重要政策である税制改革の方向性はいまだ不透明感漂う状況となっている。メキシコからの輸入に重税を課すというトランプの「公約」は本当に実現してしまうのだろうか。

全米税制改革協議会(ATR)会長 グローバー・ノーキスト氏●共和党保守派の実質的な司令塔として、大統領選挙戦でトランプを支持した米国最大級の政治団体・全米税制改革協議会議長。(AFLO=写真)

トランプ大統領は「歴史的な税制改革」になると自身が明言した内容をいまだ公表していない。しかし、今回の訪米取材に合わせて実施した、全米税制改革協議会議長で共和党幹部のグローバー・ノーキストとの面談(17年2月22日)から、トランプ政権への評価と税制改革の見通しについて、筆者は重要な示唆を得ることができた。

ワシントンDCを拠点とする全米税制改革協議会のノーキスト議長は、保守系の共和党連邦議員を束ねる税制改革に関する保守派圧力団体のトップだ。同団体がレーガン大統領の依頼で設立されたという経緯が示すように、80年代当時から保守派の中心人物として活躍してきた重鎮である。

また、94年に共和党が連邦下院多数派を40年ぶりに取り戻したときの保守運動の中心人物であり、ジョージ・W・ブッシュ政権の巨額の減税政策の実現にも影響力を行使している。現在でも上院・下院の大半の共和党議員にすべての増税に反対する署名にサインさせるだけの影響力を持っている。トランプ政権においても、ノーキストの了承が得られない内容を共和党の連邦議員が推進することは実質不可能だ。