トランプはビジネス側から来た人である
ワシントンにおいて絶大な影響力を誇るノーキストはトランプ政権についてこう語る。
「トランプは、共和党と保守運動をした経験がない。なぜなら彼がビジネス側から来た人間だからだ。ゴールドウォーター、レーガン、ニクソンなどは州知事や上院議員等を数年にわたり経験し、彼らがどのように考えたのか、諸問題にどのように対処したのか、彼ら自身のポジションは国民が理解していた。トランプには前述のようなキャリアはないので周囲から見ても不明な点が多い。ただし、トランプの見解を俯瞰すると、レーガンと同じように減税・予算減・規制緩和を推進している。
減税・予算減・規制緩和の3点についてワシントンで議論を進めると、往々にして、メディアから非難され、既得権益を守りたい政党・政治家からは無理だと言われる。しかし、現在、共和党は上院と下院で過半数を保持している。トランプが共和党の上院・下院をまとめ上げることができたなら、彼はメディアや反対勢力の主張を聞く必要はない。
私は(首席戦略官でトランプの腹心とされる)スティーブ・バノンに関心はない。彼はカリフォルニアに住んでいた人でワシントン政治に従事してきた人物ではないうえに、その思想は保守主義者ではなく、ポピュリズムの側面が強い人物なのだ。トランプ政権においてバノンの役割はあるが、トランプの考えは最高裁人事でも表れた通り、レーガン流の保守主義だ。したがって、トランプの主張と保守運動の主張とのギャップは少ないだろう」
※「トランプ大統領による予算教書」を踏まえて、下院・上院の予算委員会が予算を策定し、両院協議会で下院・上院の予算案を調整して本会議で決議。予算教書を無視することも可能だが、あとで拒否権発動をされた場合に事実上再可決が困難となる。歳出は、歳出委員会の小委員会で可決された順に予算執行。可決されない限り10月を過ぎてもダラダラ審議が続き、なかなか予算が執行しないこともある。「財政調整措置法」の活用は絶対条件ではないが、予算決議で財政調整措置の利用を付帯することで、歳出と歳入に関わる部分に変更を加えることが可能。同措置を活用すると審議時間を20時間に制限できるため、フィリバスターによる野党の妨害戦略が使用できなくなるという政権にとっての利点があり、トランプ大統領が求める減税案を実現するために利用される可能性が高い。
トランプはメキシコ税を実現できるのか
ノーキストの発言からトランプ政権と保守派はもともと距離があり、バノン首席戦略官については保守派内でも警戒感があることが伝わってきた。そのうえで、ノーキストは保守派の影響力が強い共和党下院議員らが推進している税制改革案にも深く踏み込んだ発言をした。
「トランプ大統領と共和党議会はアメリカ合衆国全体の減税を進めたいと思っている。税制改革は、法人税を(現行の35%から)20%へ減税することにより、国際競争力のある税制を実現するためのものだ。加えて、我々は国境税調整を踏まえた税制システムを開始する意志がある。相続税、代替ミニマム税の廃止、そして個人に対する税率も低くしていく。現在、全体で2兆5000億ドルの減税を想定しており、非常に成長志向の内容だ。
その税制改革計画の肝は国境税(メキシコなどからの輸入品に関税を課して輸出利益を非課税にする税)調整であり、それによって数兆ドルの財源を集めることで計画全体が機能することになる。それはオバマ政権8年間でアメリカ経済を壊滅させた2%成長ではなく、レーガン政権のような年間4%のGDPの成長をもたらすことになる」