無欲で善行をするビジネスパーソンの「落とし穴」
ビジネスシーンで、大したことをしたと自分では思わないのに、相手のリアクションが思いのほか大きくて困惑した経験はないだろうか。
(1)仕事を円滑にすすめるため、上司に新しく導入されたソフトの使い方を教えたら、大げさなほどにホメられた。
(2)チームで動いているプロジェクトに関係する企業の最新ニュースを知り、同僚と情報を共有しておくため朝一番にメールで伝えたら、「ありがとう、今日の昼飯おごるよ」と返信が来た。
(3)収拾がつかなくなってから仕事を振られても困るので、先輩に付き合って数時間残業し、目の前の課題を片付けたら、先輩からの信頼が目に見えて厚くなった。
どうしてそうなるのか。
あなたにとっては特別なことではなくても、相手にとって「ど真ん中の直球」だったからである。それに対してあなたが驚いたのは、「自分のためにした」ことの結果が大きかったからだ。
(1)のケースなら、あなたは、単に「ソフトの使い方がわからないから代わりにやってくれ」と上司から頼まれるのは嫌だった。(2)では情報を共有できているチームのほうが、仕事がうまくいくと思った。(3)では先輩に仕事のペースを乱されたくないから先手を打った。多少の時間は割いたけれど、そのために努力した自覚はないし、努力してまで協力する気もなかった。
結果的にそれが相手を助けることになったのは、タイミングが良かったから。自分の仕事をスムーズにするための行為が、何かで困っている人から、大きな親切ととられたのだ。
上司はソフトのことがわからず(1)、同僚は仕事先の担当者との話題作りで悩み(2)、先輩は週末の休みを犠牲にして働くしかない、とあきらめかけていた(3)。彼らから見れば、あなたは苦しいときに頼りになる人。あなたは自分の能力を普通に出しただけで、感謝という”褒美”を得ることになったのである。
しかし、これを読んで「なるほど、そうなのか」と思う人は気をつけたほうがいい。