2003年に「裁判の迅速化に関する法律」が施行されて以来、裁判はサクサク進むようになった。最大のポイントは2005年の「公判前整理手続」。長年、裁判傍聴を続けてきたライターの北尾トロさんは「裁判だって時短できたのだから、仕事も同じように時短できるはずだ」という。そのやり方とは――。

いまどきの裁判に学ぶ仕事の「超時短」術

一部の企業で、週休3日制の導入が始まっている。

これに対し、「ただでさえ忙しい業務がこなせるのか」「労働時間が減るのは歓迎だが残業代がなくなると生活が苦しくなる」「休みの日が増えてもすることがない」といったネガティブな意見もある。

どこまで広まるか、定着するかはいまのところ未知数だが、世の中の流れが長時間労働をなんとかしようという方向に動いているのは確か。ならば、自分なりの時短方法をいまから考えておいて損はないだろう。

時短というテーマは一時期、司法の世界でも大きな問題になった。

僕が傍聴を始めた2001年当時、裁判はなんて時間がかかるのだろうと驚いたものだ。小さな事件でも初公判から判決まで3~4回を要すことが多かったし、少し複雑なものだと5回はかかる。大事件ともなれば判決まで1年以上というのも珍しくなかった。

長引けば人の記憶は薄れるし、いいことは何もない。それなのになぜ長期化しがちだったかというと、裁判官が抱えている案件が多すぎ、こなすだけで手一杯だったからだと思われる。

▼被告人「話がよく聞こえません」裁判長「耳が遠いのは知っています」

必然的に開廷ごとの時間は短く、中身も薄い。予定されていた証人の都合が悪くなって次回日程を決めるだけで終わってしまったり、審理が始まっているのに被告人の精神鑑定結果がなかなか出ずに数カ月間のブランクが生じたりする。ときには弁論準備の時間稼ぎなのか、コントみたいな引き延ばし作戦まで見かけた。

被告人「えーと、話がよく聞こえません」
裁判長「被告人の耳が遠いのは知っています。裁判所が用意した補聴器をつけていますよね。作動は確認済みのはずですが」
被告人「それでも私には聞きづらいのです」
弁護人「裁判長! これはどういうことですか。よく聞こえない補聴器では被告人に著しく不利であり、審理続行が不可能です」
裁判長「では、本日はここまでとします。次回日程は……」
弁護人「良い補聴器の準備をお願いいたします」

また、審理も半ばを過ぎた頃になって弁護人が新たな証人を申請することもあった。証言を依頼していた人から裁判開始後にOKが出るケースなどで、こうしたことがあると、検察は準備のための時間を要求し、さらに日程が延びることもある。