責任をとらない慎太郎、侍なら腹を切らんかい
小池氏はブラックボックスと言っているが、東京都議会には見えづらい部分がたくさんある。実は、東京都は情報開示などの行政改革が最も遅れている自治体の一つだ。本来は率先して全国のリーダーであるべきだが、そうなっていない。県知事になったとき、宮崎県は情報公開に関して都道府県でワースト2位だったが、辞める頃には上位10位に食い込むくらいになっていた。東京都は低いままだった。当時、東京都知事だった石原慎太郎氏が、興味関心を示さなかったことが関係していると思う。
東京都の17年度予算案の中で、政党復活予算の問題が明るみに出た。30年くらい前まではどこの地方自治体でも存在していたが、今やほとんど存在していない。東京都は最後まで残っている自治体だった。石原氏の時代に、東京都は財政再建団体に転落間際から改善し、排ガス規制、羽田空港国際化などの大きな政策は進めることができたが、職員の意識改革は進まずにガラパゴス化していたのではないだろうか。
小池都政になって豊洲移転問題・オリンピック問題など、顕在化される問題が多くなった。これは小池氏の大変な功績だ。待機児童や災害対策などはこれから予算を組んで具体的に取り組んでいくだろう。小池氏に最も期待しているのは、これまでの都政が成しえなかった職員の意識改革とさらなる行財政改革だ。都庁内の硬直化して、見えなくなっている部分をあぶり出し、解消することを期待したい。
豊洲新市場への移転問題では、石原氏や当時の幹部を呼び出して明らかにすることが必要だ。3月3日、石原氏は移転を決めた責任者として、会見を開いた。「果たし合いに行く侍」の心境で臨むと事前に言っていたが、「責任転嫁」と、詳細については「ゼロ回答」に終始した酷い会見だった。侍なら腹を切る覚悟で臨んでほしかった。
石原氏は都議会の百条委員会に呼ばれることになっているが、真相を明らかにするには特別委員会では弱いので、妥当な判断だろう。東京オリンピックに関してもそうだが、通常の特別委員会は出頭や証言の義務がない。極端な話、嘘をついても罰則規定がない。質問と答えを事前にすり合わせることも多いため、真実を明らかにすることは難しい。
小池氏には、都庁職員の浄化にも取り組んでほしい。東京都は5年・10年後に、今と同じように潤沢な資金を確保できる保証はない。2020年東京オリンピック・パラリンピックの後、一気に高齢者が増えると言われている。今後10年の間に何らかの対策を講じなくてはならないだろう。
東京都には落札率が高すぎるという問題もある。調査・精査をすることで正当性を担保して、透明性をあげていくことが必要だ。行財政改革、都職員の給与体系、天下りの問題、議会改革など、これらの改革をうまく進めることができれば、小池さんは歴史に名を残すような首長になるだろう。
石原氏は「部下を信じているので、週2回しか都庁に行かなかった。信頼できる部下を育てることが知事の仕事だ」と言っている。知事の仕事は、職員を信じることと、監視することの両方だ。東京都は首長が都庁にいないことで、マイナス面が出てきたのだろう。首長は行政をコントロールしてマネジメントする立場で、部下が優秀だから丸投げすることは間違っている。職員を敵視して問題になったのが大阪、全く信用して見えなくなったのが東京だ。
小池氏のやり方を見ていると、懐かしいと感じることが多い。劇場型にしてメディアの注目を集める手法はさすがだ。知事在職中の4年間、注目を集めるため、話題を提供し続けないといけないので小池氏も大変だろう。メディアが注目しなくなってくると、また旧体制が跋扈してくる。
都政の改革は最初の2年間が勝負になる。その間に組織や条例も含めてバッと整備してしまうと、うまくいく。小池氏はいい動きをしていて、最初から飛ばしている印象を受けると思うが、最初が肝心だからこそ、もっとぶっ飛ばさないといけない。