会社には「良い調整」と「悪い調整」がある

会社が健全に進んでいくためには、意見のぶつかり合いはあって当然です。つまり、本当に必要なのは調整ではなく、混乱だということです。そして、それをいかに上手にマネジメントするかということです。体を鍛えるトレーニングと同じです。それなりの負荷をかけるからこそ体力や筋力がアップしていきます。

混乱と聞くとマイナスのイメージを持つかもしれませんが、部内や社員同士が丁々発止の議論をすることはプラスのエネルギーを生み出すのです。1つの目標に向かって全員が一丸となって取り組むには、そうしたプロセスは欠かせません。その意味では「良い調整」と「悪い調整」がある。調整が隠ぺいにつながったとしたら後者です。

率直な意見をぶつけ合えば、自分の考え方が間違っていることに気づくかもしれません。その場合は、自分のメンツなどにこだわることなく撤回することも必要でしょう。胸襟を開いて話し合えば、お互いを理解するきっかけにもなります。相手の正直な気持ちや素顔を知るからこそ、そこに信頼も醸成されるのです。

このように、時代によって望まれる人材像は明らかに変わってきています。例えば、三菱自動車の燃費データ不正のような深刻なコンプライアンス問題が相次ぐ昨今の日本行で求められているのは、混乱や対立をただ抑え込むのではなく、それをマネジメントし、そこから新しい未来を創造する道を見つけることのできるリーダーです。

柴田昌治(しばた・まさはる)
1986年、日本企業の風土・体質改革を支援するスコラ・コンサルトを設立。これまでに延べ800社以上を支援し、文化や風土といった人のありようの面から企業変革に取り組む「プロセスデザイン」という手法を結実させた。著者に『なぜ会社は変われないのか』『なぜ社員はやる気をなくしているのか』『成果を出す会社はどう考え動くのか』『日本起業の組織風土改革』など多数。近著に『「できる人」が会社を滅ぼす』がある。
(構成=岡村繁雄)
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