「仕事は自分のため」という割り切り

柴田昌治 スコラ・コンサルト プロセスデザイナー代表

かつて、日本の会社では「滅私奉公」が当然とされてきました。働き手の意識も就職というより就社だった気がします。私の大学時代の友人たちは、すでに定年を迎えていますが、その多くは、文字どおり会社ひと筋に生きて、仕事に打ち込んできた人ばかりです。そのうちの何人かは大企業の役員まで勤め上げました。

けれども、それだけでは「会社あっての自分」になりかねません。そこで出世することがアイデンティティになってしまう。もし会社に裏切られるようなことがあれば、たちまち自分の存在意義すら見失ってしまいかねません。やはり「仕事は自分のためなのだ」という割り切り方が必要になってきます。また、そのほうが実力も出せるのです。

以前、私が社内風土改革をサポートした段ボール機械製造機器メーカーのトップがそうでした。社長自身が、じっくりと物事を考えるタイプで、「働くのは、自分の家族のため、自分のため。そのためにこそ会社を良くしたい」と思ったそうです。そこで働く社員も「僕らは会社のために働いているわけではありません。自分のためです」と話していたのが印象的でした。

これまでの日本のビジネスマンは「キャリアは会社が作ってくれるもの」という意識が強く、人事異動の際にも「営業に行け」とか、「大阪支社を頼む」というように、会社が決めた通りに配属されていきます。もちろん、それが適材適所であるときは問題ないのですが、納得がいかないのであれば、ダメもとでも人事部に自分の希望を伝えてもいいと思います。