モチベーションを失わない方法

【田原】トーマツに入ってから活動が軌道に乗るまで6年くらいかかったことになりますね。Jカーブの底にいた期間が長かったですが、斎藤さんはどうしてモチベーションを失わずにやってこられたのですか。

【斎藤】私は感情曲線がその人の熱量を決めると考えています。

【田原】感情曲線?

【斎藤】感情曲線は、縦軸を感情、横軸を年齢にして、何歳のときにどのような感情でいたのか示したものです。ここに表れる山と谷こそが人の個性であり、山と谷の差が大きいほど熱量が生まれます。ある雑誌で、戦後のリーダーが若い世代にメッセージを送るという特集がありました。印象的だったのは、リーダーたち全員が戦争の話をしていたこと。戦後のリーダーたちは戦争というつらい経験をしたから熱量があるのです。

【田原】なるほど。いいときと悪いときのギャップが大きいほど頑張るわけですか。

【斎藤】じつはいま仙台で起業家が増えています。おそらくこれも東日本大震災という深くて大きな谷を経験したからでしょう。

【田原】その説だと、斉藤さんの熱量がすごいのも谷があったから?

【斎藤】そうですね。会計士に合格する前に2年間浪人をして、会計士になったあとも、大企業のなかにいてつらいなと感じることがありました。もっとも、ベンチャーの経営者は圧倒的にリスクを背負ってやっています。それに比べたら自分なんてぬるいと思いますが。

ベンチャー支援でどうやって儲ける?

【田原】ビジネスの話もうかがいましょう。TVSはどうやって儲けているのですか。モーニングピッチでお金を取るのかな。

【斎藤】いえ、モーニングピッチは無料です。収益源は3つあります。1つ目は、ベンチャーが成長したら、われわれ監査法人のクライアントになってもらう。2つ目はベンチャーが成長するために、大企業に事業を売却する際のサポートによるフィービジネス。そして3つ目が、大企業がベンチャーと協業して新しい事業をつくるときのコンサルティングです。

【田原】収益としてどれが一番大きいのですか。

【斎藤】コンサルティングです。なかでも大きいのは官公庁や自治体向け。いま多くの官公庁や自治体がベンチャー政策に熱心に取り組んでいて、その立案や実行をお手伝いさせていただいています。都道府県でいうと、35都道府県で受託しています。

【田原】基本的に支援するのは日本のベンチャーだけですか。

【斎藤】いえ、いま7カ国で展開しています。たとえばシンガポールでも毎月、シンガポールのベンチャーがシンガポールの大企業にプレゼンするイベントをやっているし、最近はインドやイスラエルにも力を入れています。

【田原】同じようなビジネスをしている会社はほかにもあるのかな。

【斎藤】ベンチャーの支援だけでなく、大企業向けのコンサルティングやベンチャー政策の立案実行、さらにメディアとリレーションをつくって世の中のトレンドを変えようというところまでやっているのは、世界でも私たちだけです。日本発のイノベーションとして、ぜひこの事業を世界展開したいです。私たちが世界一になれば、日本企業が世界に出ていくときの後押しもできます。

【田原】世界でできるかな。

【斎藤】いま国内に23拠点あり、各地域でキーマンをネットワークしています。世界でもやることは同じです。