「胸はオトリ、お尻が本命」のロジック

あなたが上司だとしよう。あなた(あるいはあなたの上役)の答はすでに出ていて、部下が何を言おうと変えるつもりはない。だからといって事情も訊かないのでは横暴だと思われる。そこで部下を呼び、弁明の機会を与えるフリをして、自分の思うように話を進めたい。

そんなとき、「端的に答えよ」というルールで部下を縛り、弁明の機会を減らすのである。弁明させても答えが一緒なら話させる意味はないし、同情心でも起きたら困るではないか。

自分はそこまで利己的な上司になりたくないと思われる方もいるだろう。もちろん常にそうしろと言うのではない。情に厚いのがあなたの持ち味だと自負するなら普段はそれでいい。

しかし上司たるもの、“素顔のままで”いられないときもあるはずだ。

答えが出ているケースとはどういうものか。

(1)失敗を認めて十分反省している部下に、念押しの意味で事の次第を問う
(2)部下の同僚に示しがつかないので形だけでも叱咤激励をしなければならない
(3)部内(課内)ではすでに失敗の原因がわかり対策も練られている案件について、(自分の)上役から説明を求められている

裁判風に言えば、部下は有罪が確定したが執行猶予がついている状態だ。最後の(3)は、裁判記録を作るようなものか。いずれにしろ大事件ではなく、凶悪犯でもなく、被告人は更生すべく仕事もしている状態。あなたや上役は立場上やむなく“場”を設けたにすぎない。そこにいるのは叱られ役の部下、苦言を呈するためにいる上役、あなたは調停係ですらない進行役だ。

上役は忙しい。部下は恥ずかしい。ならば、余計な口出しをさせず短時間で終わらせることこそ最上の策となる。

このとき、逆らえない相手(部下)を叱るだけではなく、原因も対策もわかっている役得を活かしたいもの。前出の胸(オトリ)→お尻(本命)のような、意表を突く一言で上役の覚えをよくできれば最高だ。