集中力が切れがちならサンドイッチ原理で対処

「集中力がないことは決して欠点ではない」と指摘するのはアドラー心理学を使った研修やカウンセリングで定評のある岩井俊憲氏。気が散りやすいタイプを自認する岩井氏は、「集中力がない=散漫力がある」というポジティブな見方を示す。そのうえで、散漫力を生かしたアプローチを教えてくれた。

あるとき、勉強に集中できないと相談に訪れた大学生に、岩井氏は机の上に3冊の教科書を置くように勧めた。1教科に長時間集中できないのはわかっているのだから、20分で飽きたら次の本へ、次々目移りすればいいと指導したという。いわばマルチタスク型の勉強法だ。

この方法を使えば、どんなに集中力のない人でも、複数のプロジェクトをバッサバッサとさばいていくことができるだろう。特に効果があるのは、岩井氏が「サンドイッチ原理」と呼ぶアプローチ。着手すべき仕事の中でも、朝一番は、最も気持ちの乗りやすいものから始めて勢いをつけるのがコツ。飽きてきたら、すぐ次の仕事に移ればいい。順繰りに複数の仕事を並行して進めながら、終業時間間際に再び好きな仕事に戻って一日を終える。そうしてサンドイッチのように好きな仕事で挟むことで、面倒に感じる業務の倦怠感が薄らぎ、実に気分よく仕事ができる。

最後に、年齢や職種を問わず、誰にでもお勧めの集中力アップ法を、行動イノベーションの専門家である大平信孝氏に聞いた。おへそを意識してお腹をへこませると背筋が伸びるため、俄然、集中力が増すという。「背骨は第二の脳とも呼ばれ、大事な神経がたくさん通っている。そのため背筋を伸ばすとパフォーマンスが高まる」というのだ。注意力が散漫になりがちな人は、日頃猫背になっていないか気をつけてみよう。

平本あきお(ひらもと・あきお)
チームフロー代表取締役、メンタルコーチ。東京大学大学院修士課程修了。米国の心理学専門大学院(アドラー心理学)でカウンセリング心理学修士課程修了。
 
岩井俊憲(いわい・としのり)
ヒューマン・ギルド代表取締役、中小企業診断士、上級教育カウンセラー、アドラー心理学カウンセリング指導者。カウンセリング、カウンセラー養成や公開講座を行う。
 
大平信孝(おおひら・のぶたか)
アンカリング・イノベーション代表取締役。目標実現の専門家。独自に開発した「行動イノベーション」により、日本大学馬術部を2度の全国優勝に導くなど活躍。
 
(大沢尚芳、榊 智朗、柳井一隆=撮影 教えてくれる人:平本あきお、岩井俊憲、大平信孝)
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