キリン・サントリーの大型合併破談も、業績の好不調が少ない業界特性で年収は安定。分野別トップ企業が2位以下に差をつけるなど、波乱なし、例年通りの展開に。
キリン・サントリーの経営統合白紙に
ビール業界、いや日本の食品業界全体が固唾を呑んで見守ったキリンビールとサントリーの経営統合がご破算になったのは、2010年2月のこと。「経営の独立性・透明性が十分に担保されるべきと考えていたが、この点で認識の相違があった」(キリンビール)。「統合比率をはじめ認識の相違があった」(サントリー)。
大方の予想通りで、そもそも上場企業と創業家が約9割の株式を保有する非公開企業との合併には無理があった。それ以上に「あまりに企業風土が違いすぎた」というのがビール業界人の偽らざる感想であった。
とはいえ、逃がした魚は大きい。もし合意すれば、国内ビール類の市場シェアの約5割を占め、年間売上高約3兆8000億円(2008年12月期)の巨大食品メーカーが誕生するはずだった。しかし、それでも世界第5位。上を見ればネスレ9兆3000億円、ユニリーバ5兆2000億円(いずれも売上高)などの地球規模の食品メーカーが君臨していて、すきあらばと日本市場を狙っている。キリンにしろ、サントリーにしろ、今のうちに収益基盤を強化して外敵に備えると同時に、アジアを中心とした海外市場で勢力拡大を図っておきたかったのだ。
大手5社の09年のビール類の総出荷量は、前年比2.1%減の4億7250万ケースと5年連続で前年を下回り、1992年に統計を取り始めて以来最低となった。少子高齢化や若者のアルコール離れから、この先も国内ビール市場の先細り感は強くなる一方だ。出荷量(課税ベース)の内訳は、キリンが1億7799万ケースで、アサヒの1億7719万ケースを振り切り、9年ぶりに首位を奪還した。シェアは、キリン37.7%、アサヒ37.5%、サントリー12.3%、サッポロ11.7%だった。そんな中での明るいニュースとして、出荷量の3割を占めるまでに成長した「第三のビール」、ノンアルコールビールという新たな市場を創出したキリンの「フリー」(ただし清涼飲料)のヒットがあった。