業界再編が加速!増える持ち株会社

内需をベースとしているので業績の好不調の波が少なく、とりわけ不況時には安定性を発揮する――。こんな食品業界の強みが2011年度は給料にも鮮明に表れた。他業界に比べ明らかに対前年比マイナスの企業が少なく、全体の半分程度に留まっている。しかも減少幅は1桁ないし2桁前半で収まっている。市場環境を概括すると、2008年あたりまで食品業界全般に吹き荒れていた原油・原材料費高騰による値上げラッシュは終息したが、代わって円高による輸入価格の下落、消費者に定着した節約モードを受けての安値競争が激化した。

食品業界一の高給取りはビール業界である。全体のトップはキリンHDの976万円。業界初の1000万円台が期待されたが、2010年も届かなかった。キリンとの差をつめたのが、941万円で、2009年4月に持ち株会社化したサントリーHD。アサヒは881万円、サッポロHDは870万円と、年収においてもビール業界が食品業界を牽引している。ちなみにアサヒは、2011年7月をメドに持ち株会社制に移行することを発表。これでビール大手4社はすべて持ち株会社となる。

全体の2位になったのは、2009年4月、明治製菓と明治乳業の合併にともなって誕生した明治HD967万円だ。持ち株会社はいうなればグループの作戦参謀部隊。社員数も少ないため、平均年収は大きく跳ね上がる。ちなみに事業会社単体で見ると製菓769万円、乳業646万円。

「いまは事業再編の最中で、2011年4月1日をもって食品事業は『株式会社明治』、薬品事業は『Meiji Seikaファルマ』という新会社のもとで行います。当然、人事体系も新しいものに変えるべく、いま組合に提案書を出したところです」(IR広報室)

新顔で上位に入った雪印メグミルク(882万円)は、雪印乳業と日本ミルクコミュニティの合併により誕生した持ち株会社。雪印乳業の09年3月期は659万円だった。

分野別トップ企業が、2位以下に大きく水を開けているのも食品業界の特徴である。製粉の日清製粉グループ本社903万円、調味料・食用油の味の素844万円の牙城は揺るぎない。製菓・パンの江崎グリコ788万円、食肉加工の日本ハム768万円の優位も変わらない。

10月に大幅値上げをした日本たばこ産業(JT)は877万円。禁煙が一気に進んで売り上げ大幅減が予測されるが、「2011年度は16%強、2011年9月末までだと25%強の販売数量減を予測しているが、売上高ベースでは不明」とIR広報部。ただし、「売り上げ構成比31.1%を占める国内タバコは年々減少しているが、同45.8%の海外タバコ(ウィンストン、キャメルなど)は逆に伸びている。M&Aで子会社にしたテーブルマーク(旧社名加ト吉)など、同19.9%を占める食品事業も好調」と、脱タバコ・食品メーカーへの転換が順調に進んでいることを強調した。

※すべて雑誌掲載当時

(宇佐見利明=撮影)