リーマン・ショック以降、部品メーカーも含めて業界全体で苦しい戦いが続く。「エコカー補助金」の打ち切りで明るい材料も見えず、各社とも雇用調整を行う兆しも出てきた。

「限界を超えている」壊滅状態の自動車

エコカー補助金特需も終焉。国内生産の縮小進む
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エコカー補助金特需も終焉。国内生産の縮小進む

「“1億円プレーヤー”が上司なので、誤解を招いているかもしれないが、その下で働く我々のような一般社員はもはや我慢の限界を超えています」

日産自動車に勤務する40代の中堅社員は、年収が大幅に減ったショックと役員報酬額のギャップへの不満をこうぶちまけた。

2010年から1億円以上の役員報酬の個別開示が義務付けられ、日産では8億9100万円のカルロス・ゴーン社長を含め6人が1億円を超えた。トヨタ自動車は張富士夫会長ら4人、ホンダは伊東孝紳社長1人だけで、自動車業界の中でも日産の役員報酬の水準はずば抜けて高い。

それに連動して一般社員も「高給」と思われがちだが、日産の2009年度の平均年収は627万2000円。自動車メーカーの中ではトヨタ、ホンダに次ぐ3番目に高い金額だが、部品メーカーを含めた輸送機器全体では16番目。日産系列の部品メーカーのカルソニックカンセイよりも12万円以上も下回った。しかも、前年(08年度)との年収の差はマイナス100万円と大幅ダウンし、社内格差は広がる一方だ。

大幅な減収は日産ばかりではない。自動車メーカーではトヨタも前年度比100万円減、次いでいすゞが97万円減、ホンダが96万円減、マツダが93万円減、スズキが85万円減、三菱自動車が84万円減と軒並み減収となっている。

それでも自動車メーカー10社の中で最高の年収額はトヨタの710万5000円で、ただ1社700万円台をキープした。しかし、トヨタ系列のデンソー(714万6000円)に再び抜かれ、輸送機器全体でトップの自転車大手のシマノ(759万8000円)とは約50万円もの大差がついた。トヨタは世界一の座を獲得するまで平均賃金も右肩上がりで伸びてきたが、09年度の支給額は10年前の00年度(785万円)実績よりも大きく下回っている。

ちなみに、メーカー10社の中で最低の賃金はスズキの513万4000円。平均年齢が35.5歳とホンダの43.3歳に比べると8歳近くも若いので単純比較はできないが、スズキは09年度も前期に引き続き営業利益、純利益とも黒字を確保し、ホンダと並んで増益に転じた。リーマン・ショック直後、鈴木修会長兼社長は「ウチのような内部留保の少ない“中小企業”は1円でも赤字は出せない」と語っていたが、“お家芸”の「内なるコストダウン」効果は1100億円を超えた。きめ細かな危機対応策が実を結んだわけだが、その陰で歯を食いしばって耐え抜く現場の働き手の姿が目に浮かぶ。