算数の神様が、見せてくれた「正2.5角形」
「そうです、星形5角形になるのです。数学の世界で正式には正2分の5角形と呼ばれています。頂点が5つあり、描き始めから2回転して描き終わります。辺は重なり合っているように見えますが、時空が違うところに存在していると考えれば分かりやすいです。その真否はさておき、nは自然数と思っていたのが、2分の5、2.5と設定するところに、論理の飛躍がある。けれど、計算上は成り立つわけですから、それを信じて描いていくと、この図形が現れます」
これが、正2.5角形か! 感動している私に大澤教頭先生は、この世にはこのような計算によって導かれた発見されたことがたくさんあると教えてくれた。
たとえば、冥王星は、計算上、この位置にあるはずだと考えられて、そこを探したところ、見つかったのだとか。また、日本人が発見した新しい元素・ニホニウムも然り。計算にもとづいて実験を繰り返したところ、その合成に成功して、存在を証明したのだという。
先生は目をキラキラさせながら言った。
「算数・数学を使えば、自分で思いもつかないことだって創造できるんです」
創造とは、辞書で調べると「新しいものを初めてつくり出すこと」(デジタル大辞林)とある。大澤教頭先生は、これをかみ砕いて「新しいものは、既成の概念を打ち破ったり、論理的な飛躍をしたりした先に生まれる」と説明する。
「知識には限界があります。6×7=42を単なる(九九の)知識として記憶していたら、忘れてしまったら、もうわからなくなってしまいます。けれど、6×7=42は、6を7回足すという原理がわかっていれば、42にたどりつくことができる。また、3角形の内角の和が180°だと学んだうえで、4角形の内角の和を考える時、4角形の中には2つ3角形が入るから、180°×2=360°だと導き出すことができる。すでに知っていることを使って代替案を考えたり、類推したり、共通のルールを発見したり。算数には、いろいろな思考の道具がつまっています。だから、論理的思考を鍛え、時に自分の発想をも超える創造をもたらしてくれる。ぜひ、時間のある時に、家族みんなであれこれいいながら、算数の問題を解いてほしいと思います」