私はビジネスパーソンに「数字スキル」をトレーニングする専門コンサルタントであるが、いわゆる「課長」といったミドルリーダー層に向けた教育研修の相談が多く寄せられる。その理由は、経営層と現場をつなぐ役割を担う者が、ビジネスにおいて重要なリテラシーの1つである「論理的に数字を使って考え、論理的に数字を使って語る」ことに強い苦手意識を感じているからだ。実際、研修の現場においてもその数字力と思考力の低さに驚くことが多い。

私が研修でリーダーたちに考えてもらう「算数」を紹介するので、ぜひトライしてみてほしい。

「優良顧客に商品A、B、Cのどれを購入したことがあるかを調査した(複数を購入したという回答も含む)。その結果は、商品Aを購入した人48%、商品Bを購入した人30%、商品Cを購入した人78%、どれも購入していない人0%、商品Cだけ購入した人は60%であった。少なくともAかBを購入した人は何%いるか?」

図を拡大
べン図を描きだすと、かえって混乱!?

すると私が行う企業研修では、多くのビジネスパーソンが3つの円(ベン図)を描く。算数の「集合」問題だと判断したためだ。確かに学校でもそう教わる。ところが図を描いた後、大半の人は手が止まり考え込んでしまう。ということは、この図は「少なくともAかBのいずれかを購入したのが何%か」を素早く把握するために機能していないということになる。

一方でロジカル・シンキングで登場する「漏れなくダブりなく整理する」の視点がある人は、このような局面でイメージ図ではなく、すぐに「表」をつくって整理しようとする。今回の場合、「Cだけグループ」を使って、最も簡単にできる漏れなくダブりのない表を使った整理をしてみると、図のようになる。