どこまでが躾でどこから虐待なのか

当連載で以前、離婚時の子の連れ去り問題について取り上げた。一方で、子を連れ去った親に別居後、児童虐待が疑われるケースがある。夫婦不和の原因が育児ストレスである場合、別居後はそのストレスのはけ口が子供に向かうことがあるからだ。別居中の子に会ったら、体に不自然な痣が……。わが子がもう一人の親から虐待されている疑いがあれば、どう対応すべきか。

まず気になるのは、虐待か、躾か。もう一人の親に文句を言っても、「ただの躾」とシラを切られるおそれがある。

法律上はどうか。児童虐待防止法では、虐待を「身体的虐待」「性的虐待」「ネグレクト」「心理的虐待」という四類型で定義している。たとえば身体的虐待なら、「児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること」を虐待という。

この定義に照らすと、痣が残るような体罰は虐待に当たると考えるのが自然だ。子供の人権に詳しい磯谷文明弁護士は、次のように解説する。「外傷のおそれがそれほどない体罰でも、子供がおびえていれば、心理的虐待と合わせ技で虐待に該当すると判断されるケースもあります。実際にはここまでは躾、ここからは虐待と明確に線引きすることは難しい面があるのは事実です」