アメリカにもあった一票の格差問題

ドナルド・トランプの勝利に終わった米大統領選。しかし、得票数はヒラリー・クリントンが上回ったことが判明している。どうして得票数の少ない候補が当選できたのか。原因は二つある。

一つ目は、勝者総取り方式の選挙制度だ。米大統領選では、各州で得票数の多かった候補がその州に割り当てられた選挙人全員を獲得する。たとえばカリフォルニア州の選挙人は55人だが、ある候補が得票率6割で勝つと、6割の33人ではなく、全員の55人を総取りできる。

この方式で、なぜ逆転が起きるのか。テニスの試合をイメージすればわかりやすい。A選手とB選手が「7‐6」「0‐6」「7‐5」だった場合、セット数の合計は「14‐17」でBが多い。しかし試合は2ゲームを取ったAの勝ち。今回の大統領選も同じで、トランプは大負けした州があって総得票数で下回ったものの、スイングステート(激戦州)でことごとく競り勝ち、総選挙人数で勝利をおさめた。

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アメリカ大統領選挙の「一票の格差」

もう一つは州間の「一票の格差」だ。各州に割り当てられる選挙人の数は、各州から選出される上院議員、下院議員の数と同じ。このうち下院議員は人口に応じて決まるため、格差はほとんどない。問題は、各州2人と決まっている上院議員。たとえばカリフォルニア州とワイオミング州では人口に約67倍の開きがあるが、どちらも上院議員分の2人の選挙人がいる。選挙制度に詳しい拓殖大学の浅野正彦教授は次のように解説する。

「建国当時、各州の人口は大きく変わりませんでした。しかし都市化によって都市部の人口が増え、大票田ほど一票の価値が下がってしまった。都市部に支持者が多い民主党のクリントンに不利でした」