競馬や競輪は公営ゆえ許される

IR(統合型リゾート)推進法が施行された。今回施行されたのは、プログラム法。カジノをつくる方向性やスケジュールは決まったが、詳細は新たに法律をつくって詰めていく。どうして2段階で法制化したのか。賭博罪に詳しい津田岳宏弁護士は次のように解説する。

トランプ米大統領がかつて所有していたカジノ「トランプ・タージマハル」(米アトランティックシティー)。現在は閉鎖。(写真=時事通信フォト)

「カジノの各論に入ると、揉めて話が頓挫してしまうおそれがあります。そこでまず総論でカジノをやることを決め、1年以内を目途に必要な法律をつくるという締め切りを設けました」

今後、具体的に議論になりそうなのは賭博罪との整合性だ。競馬や競輪など公営ギャンブルはどうやって辻褄を合わせているのか。競馬や競輪は賭博だが、競馬法や自転車競技法などの「特別法」をつくって違法性を阻却している。

「競馬や競輪が許されているのは公営だから。昭和の時代に、競馬や競輪を特別扱いするのは憲法の平等原則に反するという訴訟が起こされました。それに対して、裁判所は公営だから特別扱いに合理的根拠があると判断をくだしています」

しかし、今回の法律によって、カジノを設置するのは民間業者となる可能性が高い。なぜなら、まず、国にはカジノ運営のノウハウがない。また、競馬や競輪とカジノでは胴元の立ち位置が違う。競馬や競輪の胴元は客同士の賭博を管理するだけ。一方、カジノは胴元と客の勝負なので理論上は胴元が負けることもありえる。公営にして負けたら税金から払うというのでは、さすがに国民の理解が得られない。やるなら民営以外に考えられず、競馬や競輪と同じ理屈は使いづらい。