現在、哲学界におけるプラグマティズムと真理探究の哲学との勢力は、拮抗していると大賀氏はいう。
プラグマティズムを「うまくいけばほかのことは犠牲にしてもいい」という、ある意味、儲け第一主義だと捉える人もいるが、大賀氏は「哲学のプラグマティズムは少し違う」という。
プラグマティズムは、科学には科学の基準があり、宗教には宗教の基準があるというように、多元的な捉え方を主張している。
また、多元的な真理を許容することとともに、大事なのが民主主義的で他者との協力を大切にするという点。これがプラグマティズムの第二の特徴だ。
「ジェームズの後に出てくるジョン・デューイは、真理探究には民主主義的な態度が必要になると強調しています。仮説を検証するためには一人ではなく、複数の人が正しいと考えなければなりません。仲間を対等に扱い、自分とは違う考え方を尊重する姿勢が欠かせないのです」
唯一の真理は存在しない。その真理を見つけるためには民主主義的プロセスが必要になる。デューイは、プラグマティズムという思想が生まれる以前から存在していたアメリカ人の文化や生き方の中に、プラグマティズム的なものを見出したのだ。