営業や交渉は、「拝啓」「前略」どちらが効果的か?
ビジネスにおける交渉においても、どちらの話し方で進めるかが大事になる。営業にとって、拝啓型の礼節を重んじての対応は大切なことだ。「今日は暑いですね。最近はいかがですか?」という挨拶言葉から、じっくりと交渉に入る。
しかしながら、相手と話す時間が限られていたり、揉めそうな案件を切り出さなければいけなかったりする時、こんな悠長な話をしていられない。そんな時は、余分な部分は省き、最短距離で相手の心に突き刺すことになる。
拝啓型が、A地点から、B地点にいって、C地点にいくという話のルートであれば、前略型は、一気にAからC地点に向かわせて、結論を早めることになる。
私事で恐縮だが、以前に、雑誌のインタビュー取材を受けたものの、数カ月間、ギャラ(規定の謝礼金)が払われないことがあった。記事を執筆したライターからは何の連絡もないので、ライターの上司にあたる編集者にこの件について電話をすることにした。
「お世話になります。以前の○○号でインタビュー取材を受けた『多田』と申します。その節はありがとうございました」と丁寧に、ことの経過を述べて、最後に次のように締めくくった。「申し訳ないのですが、なるべく早くお支払い願えますでしょうか?」
すると、編集者は、驚いた様子で「そうでしたか。私自身、編集部から担当部署が変わってしまったので、目が行き届かず失礼しました」と非礼を詫びた後に、「すぐにお支払い致します」という。
「すぐに」という言葉を聞いて、一端は安どしたものの、その後、たびたび銀行口座を確認するも、まったく入金がない。そこで、元編集者に電話をするも、まったく連絡がつかなくなるなど、数週間が経過してしまった。もはやこれは、拝啓型で丁寧に依頼している場合ではないと判断した。
そこで、私は雑誌の編集部に電話をかけて「編集長ですか、この件の責任者を出してもらえないか」と直談判をしたのだ。電話に出た人には、「○○号のインタビューを受けたが、数か月以上もギャラが支払われていない」と要件のみを告げ、口調も「支払いをお願いします」とやんわりしたものではなく、「早急に払ってください!」という語気を強めたものにした。その後、決裁権のある人からすぐに電話があり、3日後に入金されることになった。